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 IoT(モノのインターネット)技術などを活用した次世代のものづくりに向けて、様々な企業の連携を目指す「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」。製造現場の「困りごと」の発掘・分析・実証実験までを行う「業務シナリオWG(ワーキンググループ)」の20年度の活動から、IVI内で表彰された取り組みを4回にわたって解説する。
 第2回の今回は、マスカスタマイゼーションに向けた取り組みを紹介する。荏原製作所やIHIなどの社員からなるWG「6E02」が、サプライチェーンの上流から下流までの企業が部品表(BOM)を共有するシステムを構築し、お互いの生産進捗を可視化した。

 WGのメンバーは、企業間や企業内の部署間で、品質、納期、製造進捗といった情報が素早く、正確に共有できていないことを課題と捉えた。サプライチェーンが長い場合、部材を提供する企業は自社への発注計画がぎりぎりまで分からないのでは需要の変化に即座に対応しづらい。一方、完成品メーカーは発注した品目の製造状況が分からないことに不安を感じていた。

 タイムリーに情報を共有できないのは、一般的に企業間の情報のやりとりが紙やメール、電話、現地訪問で行われているからだ。大企業であれば調達部門や営業部門の社員、中小企業であれば経営者までもが多くの時間をこうした情報の確認に割いている。

 注文内容の変更などはメールで連絡した上で、念のため電話でも確認するなど二度手間になるケースが多かった。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で現地訪問に制約が生まれ、「詳細な進捗情報をより共有しづらくなった」(WGのメンバー)という。

 そこで、目指したのが企業間で共有できるBOM*1の開発だ。「昨今は、スマートフォンのカバーのように製品を自分仕様にすることが当たり前」(WGのメンバー)だ。マスカスタマイゼーションの必要性が高まっているため、繰り返して造る量産品ではなく、1品ずつ異なるカスタマイズ品のBOMを企業間で共有することを目指した。

*1 BOM(Bill of Materials、部品表) 生産や調達を管理するコンピューターシステムで扱う、製品ごとの部品情報の集合体。各部品の品目情報に加え、部品がどのように組み合わされて半製品(アセンブリーやユニット)や製品を形成するかの製品構成情報も含む。

 荏原製作所の本社(東京・羽田)、米エリオットグループ(荏原エリオット)の袖ケ浦工場、神奈川県横浜市にある協力会社を対象に約2か月間、実証実験を行った。この3社で構成するサプライチェーンは、プラントや産業用機械向けに個別仕様に対応した製品を生産している。

実証実験の対象となった垂直サプライチェーン
実証実験の対象となった垂直サプライチェーン
(出所:日経クロステック)
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 具体的には、協力会社が加工した部品を使って、荏原エリオットが圧縮機や蒸気タービンを造る。荏原製作所はそうした機能製品を組み立てて完成品にしている。ここで、企業間で生産の進捗が見えないことや、情報共有に時間がかかることから生産計画が冗長なものになっていた点が課題だった。