「デジタル化の本質は、様々な境界が無くなり、どこの誰とも直接つながれるところにある」。デジタル庁の石倉洋子デジタル監は2021年10月12日、デジタル活用の在り方について議論する日経BP主催のオンラインセミナー「デジタル立国ニッポン戦略会議」に登壇し、こう述べた。多様な人材が協働することで多様性が発揮され「新たなアイデアが生まれる。社会を根底から変える原動力になる」と続け、日本全体でデジタル活用を推し進めて行くことの必要性を訴えた。
石倉氏は2021年9月に発足したデジタル庁のデジタル監を務める。デジタル監はデジタル庁の事務方トップの役職だ。デジタル監として、行政機関におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進と、官民連携による社会全体のDXをけん引する。
石倉氏は「この3~5年、民間企業が戦略の話をする時にデジタル化やDXの話が出てこないことはない」と述べ、日本でもデジタル化に向けた機運が高まってきているとの見方を示した。一方で「世界から見ると、大騒ぎしている割にはデジタル化で進んでいるとは思われていない」と指摘。「デジタル化のステータスはまだまだ、やるべきことが多い」と話した。
官民連携によりDXを促進
このような課題を解決する目的でデジタル庁は発足した。まず取り組むのは行政のデジタル化だ。「行政は(デジタル化が)あまり進んでいなかった。ここを進め、日本を大きく変える」(石倉氏)。
もう一つの役割が、官民連携によるDXとイノベーションの促進だ。企業は生き残りをかけて常に新しいことに取り組む際に、既存の法制度などが足かせとなることがある。そのような課題の解消を図る。「民間や官の人たちと、この国をデジタルで大きく変えようという目標の下でやっていく」(石倉氏)。
カギは官民の協力にあるという。「イノベーションは多様性が重要」(同)だからだ。「同じ(立場の)人だけでは新しいアイデアが出るわけがない」。例えばデジタル庁には「官から300~400人、民間から200人ほどを集めている」。