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 地方都市が抱える人口減少の問題をデジタルで解決し、それを持続可能なものにしていくにはどうすればよいか――。日経BPが2021年10月に開催した「デジタル立国ニッポン戦略会議」において、地方自治体の首長や参謀役としてデジタル地方創生に関わる4人が討論した。

 4人とは石川県加賀市の宮元陸市長、静岡県浜松市の鈴木康友市長、群馬県前橋市の「スーパーシティ」構想でアーキテクトも務める日本通信の福田尚久社長、デロイト トーマツの香野剛パートナー/Government & Public Services インダストリーリーダーだ。司会は日経BP総合研究所の小林暢子コンサルティングユニット長主席研究員が務めた。

IoT人材育成と先進技術導入に注力

 石川県の南西部に位置する加賀市は、人口が6万5000人弱で、最大の課題は人口減少だ。1990年には8万人を超えていた人口は、2040年には4万3000人を下回る見込みだという。

石川県加賀市の宮元陸市長
石川県加賀市の宮元陸市長
(写真:村田 和聡)
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 主力産業の一つは観光業だが、観光客も減り続けている。1985年ごろは年400万人を超えていたが、2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、約100万人まで落ち込んだ。2014年には「日本創成会議から消滅可能性都市と指摘された」(宮元市長)。

 そういった状況を変えるため、2016年以降はIoT(インターネット・オブ・シングズ)人材の育成と先進テクノロジー導入を柱にした成長戦略に力を入れてきた。これまで、スタートアップなどイノベーション関連企業などと24件の協定の締結や宣言を行い、米国のスタートアップと提携して起業家育成プログラムを提供するなどしてきた。

 学校でのICT教育にも力を入れている。小中学校でのプログラミング教育は「国が必修化した2020年より前の、2017年から開始した」(宮元市長)。

 2021年8月にはシンガポールの教育機関であるシンガポール・インスティテュート・オブ・マネージメント(SIM)との間で「加賀市とSIMとの留学に関する覚書」を交わした。加賀市が、高校生のSIMへの留学をサポートする。SIMでは、英ロンドン大学、米ニューヨーク州立大学バッファロー校などの学位が取得できるという。

 行政サービスのデジタル化も進めている。2021年9月末時点で、マイナンバーカードの申請率は79.7%、交付率は70.0%と、どちらも全国の市区で1位だ。スマートフォンから172種類の行政手続きの電子申請を可能にしている。

 また、宮元市長は「エストニアを参考にした、関係人口を創出する加賀版e-Residencyでスーパーシティを目指している。この取り組みで移住者や定住者の増加につなげたい」と力を込めた。

「経済」も健康に、規制緩和で先端サービスを

 浜松市の鈴木市長は同市の特徴について、「中山間地域から都市部まであらゆる地域特性を持つ『国土縮図型』だといわれており、全国の地域が持つ課題のほとんどが当てはまる」と説明した。一方で強みとして、「20大都市の中で健康寿命が3期連続1位」「日本有数のものづくりの街」などを挙げた。

静岡県浜松市の鈴木康友市長
静岡県浜松市の鈴木康友市長
(写真:村田 和聡)
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 2019年には、社会課題をデジタルの力で解決することを目標に「デジタルファースト宣言」をした。それ以降デジタルを活用し、都市の最適化、市民サービス向上、自治体の生産性向上の3つに注力している。

 デジタル化の旗振り役として、2020年4月に庁内組織「デジタル・スマートシティ推進事業本部」を設けた。同時に、官民連携のための組織として、「浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム」をつくり、現在は約150の企業や団体が会員になっている。

 モビリティー分野の取り組みとして、2020年度に「浜松版MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)構想」を策定した。鈴木市長は「浜松には多くの自動車メーカーがあり、自動車産業の集積地といえる。そこでモビリティーを活用して持続可能な街づくりをしようと考えた」と説明した。

 MaaSの取り組みの一つに、官民連携でつくったフードデリバリーのプラットフォーム「Foodelix(フーデリックス)」がある。鈴木市長は「コロナ禍で飲食店が困っているので、力になりたいと思った」と語る。現在もFoodelixに様々なサービスを追加しており、将来的には全国展開を考えているという。

 鈴木市長は「浜松市の特徴や強みを生かし、身体の健康と経済の健康の両方を実現したい。そのためには様々な分野で規制を緩和し、それによって実現可能になる先端サービスを活用していきたい」と語った。