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 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが2021年9月17日に開催した「ITイノベーターズ会議」。デジタル変革リーダーであるエグゼクティブメンバー(幹事会員)らによるディスカッションでは、日ごろメディアで取り上げられる華やかなDX(デジタルトランスフォーメーション)成功例の裏側にある、現場の生々しい苦労話が飛び交う。

 今回の議論で盛り上がったのが、抵抗勢力の巻き込み方について。デジタル変革は総論賛成・各論反対になりがちで、推進に苦労している企業は少なくない。先進企業もこの悩みを抱えているのである。抵抗勢力という「DXの壁」に変革リーダーはどう向き合い、改革を実行しているのか見てみよう。

「デジタルは金食い虫ではない」と思わせる振る舞い

 「小さな成果をどんどん共有し、デジタルが金食い虫ではないと思ってもらうことが重要だ」。大手スーパーであるベイシアの亀山博史マーケティング統括本部本部長デジタル開発本部本部長はこう強調する。

ベイシアの亀山博史マーケティング統括本部本部長デジタル開発本部本部長。会議にはオンラインで参加した
ベイシアの亀山博史マーケティング統括本部本部長デジタル開発本部本部長。会議にはオンラインで参加した
(撮影:井上裕康、以下写真同)
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 「いずれの企業も長年運営してきた既存事業が収益の柱であり、『デジタルを使って本気で変わろう』というマインドを持った人材はまだまだ少ない」。亀山本部長は現状をこう打ち明ける。

 亀山本部長は社内のデジタル変革への意欲を高めるため、デジタル部門の取り組みを他部門に積極的に情報発信・共有しているという。その具体的な取り組みについては、会議の出席者が興味深く聞いていた。それは、会員向けスマートフォンアプリで収集した顧客の居住地データを、デジタル地図にプロットした画面を他部門に示したというエピソードだ。顧客がどの地域に多く住んでいるのかなどの状況がひと目で分かるシステムであり、出店戦略に有効なツールとして社内の共感・理解を得られたという。

 「仮に社内から『デジタル投資は高いなあ』と思われている状況でも、収集したデータをきちんと多くの社員に共有するなど行動を起こせば、『あれはアプリだけの投資じゃなかったんだな』、『このデータがあれば何か面白いことができそうだな』と思ってもらえ、デジタル投資への許容度がぐっと高まるもの」。亀山本部長はこう話す。デジタル部門が事業部門のニーズを想像して、具体的なデータを分かりやすく示す。こうした地道な取り組みこそが、DXに対する抵抗勢力を減らして変革スピードを上げる近道なのかもしれない。

 「DXを推進すれば事業部門とデジタル部門がぶつかるのは当然のこと」。こう語ったのが、SOMPOホールディングスの楢崎浩一デジタル事業オーナーグループCDO(最高デジタル責任者)執行役専務だ。ではどうするか。

 楢崎専務は、各事業部門のリーダークラスを集めて、大型プロジェクトを進行させているという。「全社を挙げて(デジタル変革に)取り組むことで、『自分には関係ない』という意識が生まれないようにしている」(楢崎専務)。DXプロジェクトにキーパーソンを参加させ、当事者意識を持たせるという正攻法で物事を進めているのだ。

ITイノベーターズ会議(2021年9月開催)で議論したDXのポイント
ITイノベーターズ会議(2021年9月開催)で議論したDXのポイント
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