全5315文字
PR

 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが2021年9月17日に開催した「ITイノベーターズ会議」。エグゼクティブメンバー(幹事会員)らによるディスカッションでは毎回、白熱した議論が繰り広げられる。今回は、「アジャイル文化の根付かせ方」という話題でも盛り上がった。

 変化の激しいデジタル時代において、企業が成長を続けるには柔軟で迅速な対応が可能な「アジャイル型組織」が適しているとされる。だが、ピラミッド型組織の日本企業では「新しいチャレンジには上司の承認が必要」「要件をきちんと決めてからでないと着手しない」など、どうしても時間をかけてしまう文化が根強い。先進リーダーはこういった「DX(デジタル変革)の壁」とも言える組織文化の変革に、どう取り組んでいるのだろうか。

アジャイルのマインドを醸成、浸透させる

 「当社は今まさに、エンタープライズアジャイルに向けて号令をかけているところだ」。こう話すのはパーソルホールディングスの内田明徳グループIT本部本部長だ。

パーソルホールディングスの内田明徳グループIT本部本部長。会議にはオンラインで参加した
パーソルホールディングスの内田明徳グループIT本部本部長。会議にはオンラインで参加した
(撮影:井上裕康、以下写真同)
[画像のクリックで拡大表示]

 「当社はM&A(合併・買収)で大きくなった会社。システム基盤の統合を進めてきた結果、それがレガシー化してしまい、なかなか新しいことにチャレンジしにくい環境にあった。これを今アジャイルで回せるように改革を進めている」(内田本部長)という。

 具体的にはシステムを機能ごとに分断してスモールチームをつくり、可能な限り内製でアジャイル開発をできるように取り組んでいるという。「数チームが既にアジャイル開発にチェレンジして、うまくいっている。今後も継続的にシステムや自社サービスを磨き続け、アジャイルのマインドを醸成していく。こうしたアジャイルな文化を事業側などにも浸透させていきたい」と語った。

 アジャイルはシステム開発の文脈で語られることが多いが、組織や事業そのものをアジャイル(=俊敏)にするというのが本質だ。顧客体験価値を高めるためには、企画、実行、検証のサイクルを継続的かつ迅速に繰り返すアジャイルの手法を取り入れるべきである――。先進リーダーはこのことを理解し、アジャイル手法を実践しながら、従業員の意識改革に力を注いでいるのだ。

 東京海上日動火災保険の村野剛太IT企画部部長も、現在最も力を注いでいるテーマに「アジャイル」を挙げた。全社でアジャイル文化を根付かせるために、IT部門主導で社員や経営陣を対象にした研修を実施しているという。

東京海上日動火災保険の村野剛太IT企画部部長。会議にはオンラインで参加した
東京海上日動火災保険の村野剛太IT企画部部長。会議にはオンラインで参加した
[画像のクリックで拡大表示]

 「決してシステム開発のためだけのアジャイルというのではなく、仕事の進め方としてのアジャイル文化を浸透させる狙いがある」。村野部長はこう話す。「監査部門が社内監査をアジャイルで進めるなど、社内でも少しずつ(アジャイル文化が)浸透し始めている」(村野部長)という。また東京・銀座の一等地にIT部門のためのアジャイル開発拠点を設けたことについても言及した。

ITイノベーターズ会議(2021年9月開催)で議論したDXのポイント
ITイノベーターズ会議(2021年9月開催)で議論したDXのポイント
[画像のクリックで拡大表示]