全3724文字
PR

 前回は、30Gビット/秒以上の最高スループットを目指す次世代無線LAN「IEEE 802.11be (以下11be)」 の標準化動向や標準化スケジュール、11beによる高速化効果について解説しました。本記事では11beの標準規格を策定する「TGbe (Task Group be)」 にて議論が進む、新機能や新技術について解説します。

複数の無線インターフェースを連携し高速・高信頼を実現

 11beにおける主な技術トピックとして、「周波数利用効率向上」や「広帯域化機能の高度化」「マルチリンク機能」「マルチAP(Access Point、基地局)協調・連携技術」「最低遅延・ジッターの改善機能」などがあります。

 中でも、これまでなかった新しい機構といえるのが「マルチリンク機能」です。11beでは、MLD(Multi-Link Device)と呼ばれる機器に搭載された複数の無線インターフェースを連携・協調させ、伝送路(リンク)を複数確立することで、高速・高信頼な伝送の実現が可能になります。

高速・高信頼伝送を実現する「マルチリンク機能」
[画像のクリックで拡大表示]
高速・高信頼伝送を実現する「マルチリンク機能」
(出所:NTTアクセスサービスシステム研究所)

 11be以前の規格でも1台のAPに、複数の無線インターフェース(2.4GHz帯、5GHz帯)を搭載する機器はありました。しかし各無線インターフェースはそれぞれが別個に動作し、一つのシステムとして連携することはできませんでした。

 11beが新たに規定するマルチリンク機能は、1つのきょう体に複数のAPを搭載するAP MLDと、1つのきょう体に複数のSTA(Station)を搭載するSTA MLD間でそれぞれリンクを形成。同一のデータを並列伝送しデータ受信の信頼性を向上したり、異なるデータを伝送し伝送速度を向上したりすることが可能になります。

 マルチリンク機能は、TGbeのMAC(Medium Access Control)層を議論するサブグループ「MAC Ad-Hoc Group」において議論の大部分を占めるトピックです。アーキテクチャーやリンク形成・接続手順、シグナリング、リンク状態管理、ACK(Acknowledge)返送方式、省電力方式、QoS(Quality of Service)制御方式、メディアアクセス方式、動作モードの策定など、幅広いトピックの議論が進行中です。これらのトピックの多くは、11beの先行仕様となる「R1(Release 1)機能」として、現在ドラフト2.0策定に向けたコメント解決処理が進んでいます。

複数APが協調伝送する「マルチAP協調・連携技術」

 11beでは新たに、複数のAPが協調し、複数のSTAと同時送受信する「マルチAP協調・連携技術」も規定予定です。こちらも信頼性の向上や高速通信が可能になります。マルチAP協調・連携技術では、複数のAPからの電波が干渉しないように、いくつかの機能形態の検討が進んでいます。

マルチAP協調・連携機能にて検討が進む形態
[画像のクリックで拡大表示]
マルチAP協調・連携機能にて検討が進む形態
(出所:NTTアクセスサービスシステム研究所)

 具体的には、複数のAPが協調し各APの送信電力などのパラメーターを最適化する「Co-SR(Coordinated Spatial Reuse)」、各APが同一の時間・周波数で送信対象となるそれぞれのSTAに干渉が生じないように同時送信する「Co-BF(Coordinated Beamforming)」、送信対象のSTAが複数のAPから送信されるデータを合成受信可能となるような協調伝送する「JT(Joint Transmission)」、複数のAP間でOFDMAのリソース割り当てを柔軟に行う「Co-OFDMA(Coordinated OFDMA)」などです。

 これらのマルチAP協調・連携機能は、フェーズ2に相当する「R2(Release 2)」機能となり、各形態の名称もまだ正式決定していません。