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米国のベンチャー企業による民間宇宙旅行の商業化は、宇宙ビジネス本番への号砲だ。今後、これまでとは比較にならない数のモノ(人工衛星)とヒトが宇宙に輸送され、2040年に100兆円とも言われる巨大市場を形成する。キーワードは「衛星コンステレーション」と「月」。月面探査での先行者利益を狙う民間企業の競争も始まった。

2つのビジネスプラットフォーム

 宇宙産業は今後、2つのビジネスプラットフォームの成長とともに拡大していく。衛星コンステが配備される低軌道と、19年5月に米航空宇宙局(NASA)が発表した「アルテミス(Artemis)計画」で再び世界的な注目を集めている月である(図1)。

図1 低軌道と月をプラットフォームにした宇宙ビジネスのロードマップ
図1 低軌道と月をプラットフォームにした宇宙ビジネスのロードマップ
宇宙ビジネスで2つのプラットフォームができつつある。1つは高度2000km以下の低軌道、もう1つは月だ。地球から距離が近い前者は民間に解放されている一方、月は国家が民間を活用しながら開拓していく。(日経クロステック)
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 低軌道ではコンステによる衛星ブロードバンド通信、地球観測などのサービスが始まっているが、23~25年ごろには人工流れ星などのエンタメ、スペースデブリ除去や衛星への燃料補給などの「軌道上サービス」が始まりそうだ。NTTとスカパーJSATが21年5月に構想をぶち上げた「宇宙データセンター」は26年開始の計画だ。

 一方、地球からの距離が38万kmと遠く、よりリスクが高い月探査や開発は、政府主導の下、民間企業が参加して進められる。アルテミス計画ではまず24年に有人月面着陸を成功させ、その後は「Gateway(月周回有人拠点)」の建設などを通じて月に物資を輸送。月面拠点を建設して月での人類の持続的な活動を目指す。ただ、この計画は月で終わりではない。その次の目標は、最接近時で約5600万km離れた火星の有人探査だ。

 アルテミス計画には米国のほか、日本、カナダ、英国など12カ国が参加して国際協調で進められる。20年代にビジネス化されるのは月面着陸船(ランダー)や探査のためのローバー、Gateway関連になるが、30年ごろに予定されている宇宙基地建設では土木・建築、そして長期滞在・移住ともなれば衣食住に関わる様々なビジネスチャンスが生まれる。民間企業は自社が得意とする技術を月でも生かし、“先行者利益"の獲得を目指す。そのスタートラインに立つための競争が既に始まっている。