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加速する民間企業の宇宙進出によって深刻化しているのが「スペースデブリ(宇宙ごみ)」問題である。現状では国際的なガイドラインは発表されているものの、明確なルール整備は進んでいない。そんななか、世界に先駆けて対策に取り組むのが日本企業だ。デブリ化を防ぐ搭載機構の技術開発や、能動的にデブリを除去する人工衛星の開発が進んでいる。

 1957年に世界初の人工衛星「Sputnik(スプートニク)1号」が打ち上げられて以降、地球軌道上の衛星の数は増え続けてきた(図1)。衛星が打ち上げられると、切り離したロケットの一部や運用期間を終えた衛星、それらが破損などにより断片化したものが宇宙空間を漂う。これがスペースデブリ(宇宙ごみ)の正体だ。

(a)1960年の軌道上の様子
(a)1960年の軌道上の様子
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(b)2020年の軌道上の様子
(b)2020年の軌道上の様子
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図1 人工衛星とスペースデブリの数は加速度的に増加
(a)は1960年、(b)は2020年における、軌道上の人工衛星などを示したイメージ図。1957年に「Sputnik1号」が打ち上げられて以降、その数は加速度的に増え続けている。(写真:スカパーJSAT)

 スペースデブリは様々な問題を引き起こす。例えばデブリが衛星に衝突すれば、衛星が破損する可能性があるほか、ちょっとした破片が衛星の太陽電池パドルにぶつかっただけでも電力を喪失してその衛星の機能が失われてしまうかもしれない。

 実際、スペースデブリへの危機感が増したのは、衛星同士の衝突事故が起こったからだ。これがもし国際宇宙ステーション(ISS)と衝突すれば、最悪の場合は人命に関わる事故を引き起こしてしまう。

 こうしたスペースデブリ問題は世界中で深刻化してきている。背景には、民間でのロケット打ち上げや衛星サービスなどが急成長し、宇宙空間へ打ち上げられる数が急増していることが挙げられる。