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米国を中心に起きている宇宙産業の破壊的イノベーション。その主役は、Elon Musk氏とJeff Bezos氏という2人のカリスマ経営者だ。特にMusk氏のSpaceXの勢いはすさまじい。海外における有力宇宙ベンチャーによるイノベーションの実態と今後について、宇宙ビジネスのコンサルティングなどを手掛けるDigitalBlastに解説してもらう。(日経エレクトロニクス)

 世界初の人工衛星である旧ソ連の「Sputnik(スプートニク)1号」が打ち上げられてから64年、Yurii Gagarin(ユーリイ・ガガーリン=旧ソ連)氏による人類初の有人宇宙飛行から50年、宇宙ビジネスがいよいよ民間人に身近なものとなってきた。

 それを象徴する出来事が、2021年7月から9月にかけて行われた民間企業による宇宙旅行の相次ぐ成功である。7月には米Amazon.comの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、自らが設立した米Blue Originの宇宙船に搭乗し、高度100kmへの宇宙旅行を体験した。そして9月には米Tesla 共同創業者兼CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が設立した米SpaceXが、民間人4人を乗せた宇宙船で地球周回軌道(今回は高度575km)への3日間の宇宙旅行を成功させた。

 1969年に米国が「Apollo(アポロ)11号」による有人月面着陸に成功して以来、一般の人々も宇宙に対する興味や夢を抱くようになった。しかし、その後もしばらくの間は実質的に米国と旧ソ連の対立という、冷戦状態での軍事面における宇宙利用の重要性に着目した取り組みが多かった。冷戦が終結した90年以降も、宇宙は主に、先進国の一部の公的機関のみが取り組めた特殊なフィールドであり、民間人には遠い存在だった。

 そこに風穴を開けたのが、Musk氏やBezos氏のような宇宙ビジネスに並々ならぬ野心を抱く、世界的大富豪の起業家である。本稿では、この2人によって海外の宇宙業界に引き起こされているイノベーションの最新動向をまとめるとともに、この分野での日本企業の打ち手などを示す。