「新型コロナウイルス」に関する報道を初めて耳にしてから、はや2年近くが経過しようとしています。昨年の今頃は、企業も個人も過去に経験したことのない状況に直面し、コロナ禍が永遠の日常になることを恐れながら、試行錯誤を繰り返していました。
状況は今も変わっていません。大きな違いがあるとすれば、完全に元の日常が戻ることはないという前提を皆が受け入れ、「ニューノーマル」が単なるはやり言葉ではなく、文字通り常識となった、ということでしょう。
そうしたなか、今年のIT Japanでは、「危機を乗り越え、成長を加速させる」というテーマを掲げました。
企業は眼前の危機を乗り越え、コロナ禍の先にある新たな時代を予測し、成長していかなければなりません。実際、コロナ禍の危機を好機に変え、力強く成長する企業の存在が明らかになってきています。
成長する企業が重視しているのは、小手先の改善ではありません。コロナ禍を力強く生き抜くためのミッションやパーパス(存在意義)を経営の指針として再定義し、その実現に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)に果断に取り組むことにほかなりません。
リアルタイムにデータを更新する基幹系システムと連動するAI(人工知能)を導入し、分析の精度を飛躍的に向上させた企業。IoT(インターネット・オブ・シングス)やロボットを活用して自動化を徹底し、生産性を大きく高めた工場。データ分析によって顧客体験を改善し続けるD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)などのECサービス事業者。もはやDXに舵を切らないという選択肢は存在しません。
しかし残念なことに、複数の調査結果によれば、全社規模でDXに取り組んでいる日本企業は全体の約1割にすぎません。問題の背景にあるのは覚悟と決断に必要な情報の不足です。
2回目のオンライン開催となったIT Japan 2021では、この情報不足という根源課題に応え、覚悟と決断に不可欠な数々のメッセージを発信することができました。講師にお招きしたのは、各界をリードする企業経営者や有識者、IT企業のトップやリーダーの皆様です。57年ぶりに東京でオリンピック・パラリンピックが開催された今年、世界と戦い続けてきたトップアスリートの言葉も聞き逃せません。
IT Japan 2021の講演を採録した本冊子をぜひご一読いただき、DXに本気で取り組むための一助としていただければ幸いです。
(内容や登壇者の役職は、IT Japanを開催した2021年8月時点のものです)
日経BP
執行役員 技術メディアユニット長
(日経クロステック/日経コンピュータ発行人)
吉田 琢也
