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 新型コロナウイルスのまん延や大規模な自然災害の発生など、我々を取り巻く環境は変化し、先行きの見えない不確実な時代になっています。従来の常識、過去の成功体験が通用しない、不連続な社会に突入したともいえるでしょう。

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お客様、地域社会の「いざ」を守る創業以来のパーパスを貫き、組織を進化させる

 こうした難しい状況だからこそ、自分たちは何のために存在しているのかという組織のパーパス(存在意義)に立ち戻ることが重要です。当社は1879年の創業以来、日本初の保険会社としてお客様や地域社会の「いざ」をお守りしてきました。このパーパスを貫き、今まで以上に社会課題の解決や、社会の進化・進歩に貢献する。そのために会社をより進化させる手段としてDXを加速させています。

新たな価値創出に向けDX推進のためデータ中核会社を始動

 グループのDXを推進するためデータ戦略の中核会社として、2021年7月に「東京海上ディーアール」を始動させました。グループが事業を通じ蓄積してきた各種のデータを活用し、ヘルスケア、防災・減災、モビリティなどの領域で独自のリスクデータプラットフォームを構築します。このプラットフォームを、高度なデータ分析を駆使した保険商品・リスクソリューションの提供につなげ、社会の新たなリスクやこれまで困難だったリスクの保険引き受けを実現します。成長が見込まれる早期検知・予防の領域でも新技術やソリューションを保険商品と一気通貫で提供し、お客様や地域社会を「いつも」支える存在へと挑戦していきます。

 グループでのデジタル戦略の全体像を紹介します。新たな成長の軸の創出、課題解決力の強化を図る「価値提供の変革」と、生産性の向上とともにリーンな経営体制の実現を目指す「社内体制の変革」の2つが大きな柱です。

 1つ目の価値提供の変革では、顧客や社会の様々な課題に対し、デジタルやデータを活用して当社のビジネスモデルそのものを変革しながら解決に挑みます。

 例えば、水害時には、人工衛星画像の分析技術とAIを活用することで、被害範囲や浸水高を最短数時間で把握できるようにし、平均で2~3週間かかっていた保険金支払いまでの期間を大幅に短縮しました。2021年7月に起きた静岡県熱海市の土砂災害でも人工衛星のデータを活用し、従来に比べ短時間での保険金の支払いにつなげました。

 ほかにも、デジタル化の進展で高まるサイバーリスクの評価・可視化サービスや、障がいのある方が働きやすい環境を作るユニバーサルコンサルティングなど、多くの領域で課題を解決する新たな商品・サービスの開発・展開を進めています。データやデジタルを活用したビジネスモデル、社会課題解決のDXを加速させることで、これまでにない新しい保険会社となるべく、挑戦していきます。

 2つ目の社内体制の変革では、社内でデジタルやデータを使いこなして生産性を高めて創出した時間を新たな課題の解決に振り向け、企業価値を高めるサイクルを回していきます。

 当社の自動車保険の支払いは年間259万件に上り、電話対応や事故対応には膨大な業務時間がかかります。2021年4月、事故対応業務に音声マイニング技術を活用し、オペレーターの通話内容の要点を分析するAIを自社開発しました。これにより、年間33万時間の創出が見込めており、事故対応業務の品質向上や、お客様と向き合う時間の拡大などに充てていく考えです。

 DXの実現には人材の育成が欠かせません。「Data Science Hill Climb」という研修プログラムを作り、東京大学の松尾 豊教授監修のもと、合計260時間以上の研修を行っています。これまで40人以上のデータサイエンティストを輩出しました。デジタルにとどまらず保険事業を理解したデータサイエンティストを自社育成していくのが狙いです。先ほど紹介した通話内容分析の音声マイニングも、研修プログラムの受講者が開発しました。

グローバルのシナジー効果でデジタル戦略を加速させる

 欧米・アジアをはじめとしたグローバルな事業基盤も活用します。各地で地域特性に応じたデジタル戦略を実施し、知見やネットワークを他の地域にも展開することでシナジー効果を生み出します。言わば「グローバルデジタルシナジー」です。

 現在、デジタル戦略推進の基盤となるラボを世界7拠点に設け、最先端テクノロジーの探索や海外グループ会社のデジタル化に取り組んでいます。国内外のデジタル責任者がナレッジ共有とシナジー創出に向けた議論を行う「Digital Round Table」も定期的に開催しています。今後は日本発のビジネスモデルを海外にも応用し、グローバルでの成長の柱の構築、競争力強化につなげていきます。

 東京海上はデータやデジタルの活用を進め、社会に価値を提供し、もっともっと世のため人のために役に立っていきます。

本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。