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 私たちが対峙する社会や環境の問題は日増しに深刻化しています。パンデミックの前から循環型社会への変換は求められていました。グローバル資本主義を前提に利便性や経済性を追求するこれまでの価値観をリセットし、持続可能な社会、地球との共生が求められています。これまでのようなROI重視の経営ではかなわないものです。その実現に、日立はAIやLumadaをはじめとしたデジタル技術を活用したDXで挑戦していきます。

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共に挑戦していく「顧客協創」がDXを成功に導く唯一の方法

 これは簡単なことではありません。それぞれが異なる企業の経営命題と社会的構造課題の解決を両立させなければならないからです。「デジタルへの旅」を通じて、お客様と共にこの両立を実現する「顧客協創」がDXを成功に導く唯一の方法だと考えます。

 ここで必要なのは知恵をつなぐ場。異なる文化や歴史を背負うメンバーがチームに集い、成功体験を共有し、尊重し合う。さらに地域ごとに異なる期待や要請があることを理解できたとき、チームの英知が哲学となり武器となっていくのです。

デジタルとAIには光と影も“優しさ”引き出す活用の発想を

 社会的構造課題の解決に挑むDXには、乗り越えるべき3つの壁があります。

 第1の壁は「Fail Forward」、つまり「失敗しながら前進すること」ができるかどうかです。まだ多くの日本企業には根付いていない文化ではないでしょうか。DX推進には「Quit talking, dosomething」が重要です。「とにかくやってみる」に近い意味ですが、製造業で言うなら、溝のあることの多いITとOT(運用制御技術)の部隊が組織の壁を崩してタッグを組み、失敗の反復から課題を抽出し、進化させる過程を指します。このプロセスが重要です。

 失敗を奨励はしていませんが日立には、失敗の中に成功につながるすべてのカギがあるという文化があり、品質改善活動では、根本原因を精緻に調べ、愚直に対策を積み上げることの大切さが組織全体に浸透しています。

 第2の壁は「現場力」です。例えば、工場の生産管理にはジョブショップ単位の改善で部分最適を積み重ね、全体最適を追求してきた歴史があります。今までは、そこにデジタル技術を導入し、OT全体を「見える化」してきたわけです。DXを成功させるには、シミュレーターを開発し、ベテランのノウハウをAIに実装したサイバー空間を作り上げ、現場とサイバー空間の双方を進化させることが必要です。ここでAIにどのようなデータをどの粒度で入力するか、どのようなロジックでKPI(重要業績評価指標)を最適化させるかを考える上で、OTの役割が重要になります。OT人材がAIを司ることができるか、この現場力の有無がDXの成否を分ける要因になります。

 第3の壁は「Ideation(発想)」です。現場とサイバー空間の両方を持ってIdeationに挑むことになりますが、企業の経営命題と社会的構造課題の解決を両立させ、マネタイズも含めたビジネスモデルを成立させるためにどうすればいいのか、「可能性の探索」が求められます。

 デジタルやAIは社会を便利にし、豊かな進化をもたらす一方、影の側面もあります。ROI重視のAI活用だけでは、人々の雇用を奪うなど、生活への影響を与えてしまいます。我々はデジタルやAIの活用で社会的構造課題に挑む中で、新たな雇用を生み、人々の優しさという光の側面を引き出していけるIdeationに取り組む必要があります。

知恵やアイデアをつなぐ場で多様なパートナーと価値創出

 このような3つの壁を乗り越えるため、既に具体的な取り組みを進めています。

 2021年4月には、業界・空間・時間を超え、知恵やアイデアをつなぐ場として、東京駅直結のフラッグシップ拠点である「Lumada Innovation Hub Tokyo」を開設しました。当社の研究開発拠点である「協創の森」をはじめ、世界経済フォーラムから世界的な先進工場としてライトハウスに選ばれた「大みか事業所」、デザイン力に強みを持ち日立グループに合流した米・グローバルロジックなど、DXの最前線となる国内外の施設とオンラインでつながっています。世界各地のステークホルダーと共に活動することで、地域の特徴を踏まえたDXの推進、価値創出の活性化につなげています。

 こうした取り組みに対し、経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「DX銘柄2021」の中で、デジタル活用に優れた実践企業に贈られる「DXグランプリ2021」に選定されました。自社やお客様とのDXをグルーバルでのビジネス展開につなげている点や、DXが企業全体の変革のエンジンとなっている点を評価いただいたのだと考えています。

 これからもDX推進を通じて社会的構造課題を解決し、新たな雇用を生み、人々が生き生きと暮らせるサステナブルな社会づくりに挑戦していきます。

本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。