今でもインテルをシリコンや半導体の製造会社だとお考えの方は多いでしょう。しかし実際はパートナーとの連携のもと、その枠を超えたソリューションを提供する会社になっていることを、まずはお伝えしたいと思います。
価値あるデータを相互に結び付け、イノベーション創出とビジネス成長に貢献します
例えば、スポーツ観戦の世界で多くのインテルの技術が採用されています。陸上競技では、肉眼で見えない時速や加速度、選手名などの情報をほぼリアルタイムで画面表示する「3Dアスリート・トラッキング」という技術を提供しています。バスケットボールでは「インテル True View」が導入されました。これは、会場を取り囲むように設置した小型5Kカメラの映像データを活用し、立体映像を生成する技術です。観戦する人たちは、より自由な視点で没入型の体験を味わえます。このような新たな可能性を広げるための取り組みをほかにも数多く展開しています。
「クラウド」「コネクティビティー」「AI」「インテリジェント・エッジ」でイノベーションを加速
半導体は現在、世界的な供給不足の問題に直面しています。コロナ禍でのテレワーク普及に伴い、PCやクラウドへの需要が高まったこと、さらに企業や教育機関がニューノーマルを見据えた投資を増強していることなどが要因として挙げられます。史上最大規模といわれる半導体需要の高まりは、今後もしばらく続くでしょう。
このような中、インテルでは2021年2月に、インテルの創業にも関わったアンドリュー・グローブの薫陶を受け、イノベーションへの造詣が深いパット・ゲルシンガーがCEO(最高経営責任者)に就任しました。彼は就任以来、イノベーションに重要なのは、「クラウド」「コネクティビティー」「AI」「インテリジェント・エッジ」の4つのスーパーパワーズ(Superpowers)だと強調しています。
この4つが、破壊的イノベーションを継続的に起こしていく原動力になる――。インテルはこれを指針とした成長戦略を打ち出しています。
戦略の1つ目は、CPUメーカーから脱却し、GPU、FPGA、専用ASICsといった複数のアーキテクチャを有する「XPU企業」へ変貌するというものです。これにより市場の成長機会を捉え、さらに多くのお客様にサービスを提供します。
同時に、シリコンからプラットフォームへ、ビジネスのフォーカスポイントを転換します。半導体から、ソフトウエアやサービスまで含めたプラットフォームに主眼を置いたビジネスへと変革し、新しいエコシステムを創出します。
そして、ものづくりの変革となる「IDM2.0」を推し進めます。従来のIDM(Integrated Device Manufacturer)の領域を超え、より斬新かつ柔軟な生産体制を構築して、増大する半導体需要に応えます。
軸となるのは、大規模な製造能力を持つ世界規模の自社工場ネットワーク、外部の半導体生産能力の利用拡大、そして世界最高水準のファウンドリー事業となる「Intel Foundry Services」です。特にIntel Foundry Servicesは独立した事業部門として、半導体産業の安定成長に貢献する存在を目指しています。
現在、米国やイスラエル、アイルランドで研究開発と設備に対する大規模な投資を実行しています。IDM2.0によって高い供給能力を持つサプライチェーンを確立し、お客様の成長・成功に不可欠なパートナーであり続けたいと考えています。
人流データを用いた実証実験を実施 需要予測や“密”の防止を図る
お客様の課題解決に向けては、広義なDXから視点を絞り込んだ「DcX(Data Centric Transformation)」を指針として掲げています。
データを中心に捉え、データの価値を最大限に引き出し、守りだけでなく攻めのビジネスモデルを構築する。あらゆる企業が保有する価値ある独自データを、同じ産業内あるいはセクターの枠を超えて連携させることを目指したものです。
DcXの方向性に沿った複数のプロジェクトが動き始めています。例えば千葉市動物公園では、千葉市の協力のもと、AIカメラを用いた人流データの分析を2020年10月から実施。SIerである日本システムウエアとインテルの協業により、需要予測やコロナ禍における“密”の防止、飲食メニューの最適化によるフードロス削減などの効果を狙った実証実験を行ってきました。ここでは、来園者の個人情報を守るため、画像データをクラウドに送ることなく、カメラと直結つながるインテルCPU搭載エッジPCで処理しています。
ほかにも4つのスーパーパワーズを活用した事例が次々に登場しています。スーパーパワーズはビジネスを加速する強大な力になる。我々自身も実感しています。
多くの企業・公的機関との中立的な関係を維持しているインテルだからこそ、様々な業界やお客様を相互につなぐことができます。これからも、領域横断的なデータ活用に基づき、お客様のビジネス成長に貢献します。
本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。