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 従来型のIT市場が縮小する一方、SaaSやAI、IoTといった新たなデジタル領域の市場は急拡大しています。デジタル人材の不足が顕在化しており、IT企業とユーザー企業で優秀な人材の奪い合いが発生しています。

GCA マネージングディレクター 池田 和明 氏
GCA マネージングディレクター 池田 和明 氏
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GCA ディレクター 遠藤 誠大 氏
GCA ディレクター 遠藤 誠大 氏
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ユーザー企業とIT企業の双方でM&Aの重要性が増しています

 なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。企業・組織でのテクノロジーとの向き合い方が変わってきたことが理由です。

 これまでユーザー企業では、自社仕様のシステムの構築・運用を外部のIT企業に任せるのが一般的でした。システム化の対象は、主に社内の業務プロセスでした。現在、焦点となっているデジタル技術は、ユーザー企業が顧客に提供する製品・サービスにも組み込まれるものであり、自社の売り上げや収益に直結します。そこで、ユーザー企業はデジタル技術活用の内製化を進めています。それは特に、DXに積極的に取り組む企業に顕著です。今後、IT企業とユーザー企業は、「協業」だけでなく「競争」する関係にもなっていくでしょう。

 そこで注目されるのがM&Aです。IT企業にとっても、ユーザー企業にとっても、デジタル系のプロダクトやDXを推進する能力を持つ企業は魅力的なターゲットになります。また、それはいわゆるデジタル人材の獲得にもつながります。

新サービスの構築・展開に向け必要なリソースをM&Aで獲得

 GCAは、日本・アジア、米国、欧州のグローバル三極体制を持つM&Aアドバイザリーファームとして、お客様をサポートしてきました。我々自身もM&Aを活用してDXを推進しています。当社のDX戦略は、デジタルで顧客とつながり、関係の一層の強化・深化を図ることを狙いとしています。第一段階として、オンラインM&Aプラットフォームサービス「BIZIT(ビジット)」を買収しました。BIZITには、グローバルな売り手企業の情報が登録されており、日本の買い手企業は、オンライン上でそれを検索し、関心のある相手先にコンタクトできます。日本企業のグローバルなM&A活動を促進・支援する新たなサービスです。

 当社はサービスを構想することはできましたが、システムを構築するための人材やノウハウがなかった。IT企業のサービスを活用し自前で構築することも検討しましたが、その場合、構築後の運用体制をどうするかめどが立ちませんでした。そこで既に実績のあるサービスを買収することにしたのです。

 そして第二段階として、「GCAコンテンツハブ」の構築に取り掛かっています。GCAが運営するお客様向けメディアとなるこのサービスは、外部のIT企業と協力して構築しています。実はここでM&Aで獲得したBIZITの人材が活躍しています。メディアの構想を理解し、それを実現するITアーキテクチャを設計。IT企業の提案やプロダクトに対する目利きをする役割で活躍しています。GCAはM&Aによって「事業」と「人材」を同時に獲得できました。

 以上当社の事例でしたが、このようにM&Aを活用して、DXを実現、加速している事例が、企業規模の大小を問わず、多数出てきました。GCAはM&Aアドバイザーとして、このような企業を支援しています。

的確なM&A戦略がDXの遅れを打開する武器になる

 日本でもDXに取り組む企業が増えたのは周知の通りです。ただし、ある調査によれば、DXとして掲げたテーマによって、その成果に大きな差があることも見えてきています。

 例えば、社内業務をデジタル化することで生産性を高めるというテーマでは、比較的多くの企業が成果を享受できています。一方で、新規事業の創出やビジネスモデルの抜本的変革といった、本質的なDXかつ企業の成長に直結する領域で成功している企業はまだ一握りです。

 M&Aは、この状況を打開する強力な武器になります。ユーザー企業は、的確なM&A戦略と実行によって、デジタル事業や人材を獲得することが可能です。獲得した人材を定着化するために、その後の適切な処遇やキャリアパスの提示が重要です。IT企業では、自社の既存の強みを起点にしつつ、M&Aによってデジタル市場の拡大に適応し、企業価値を高められます。また自社の売却や資本提携も企業価値向上の選択肢になり得ます。

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本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。