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東京オリンピックで、日本は金27個を含む過去最多のメダルを獲得しました。特に注目していた競技はありましたか。

大畑 やはり7人制ラグビーです。男女とも結果にはつながりませんでしたが、課題が見えた点は成果でした。ビジネスも同じでしょうが、すべて思い通りに進むことはまずありません。うまくいかなかったときどうするかを考え、次につなげる意識が重要です。

元ラグビー日本代表 大畑 大介 氏
元ラグビー日本代表 大畑 大介 氏
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遅咲きでも努力すれば目標は達成できる 緻密な準備と練習、自己コントロールが重要

 スケートボードやサーフィンといった新種目では、参加する全員で“場”の盛り上がりをつくるある種の連帯感を感じました。スポーツの新たな可能性を感じて印象的でしたね。

田中 1つ挙げるならやはり女子の体操です。村上茉愛選手が床運動で銅メダルを取りましたが、そこまでの過程を見てきたので感無量でした。

体操元日本代表 田中 理恵 氏
体操元日本代表 田中 理恵 氏
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大変だからこそクリアしたときの喜びは大きい それをスポーツに教わった

 彼女は幼いころから天才と言われてきましたが、女子はどうしても体形が変化しますし、コロナ禍で思うように練習できない時期もありました。こうした経験を乗り越え、最高のパフォーマンスを最高の舞台で見せた。周囲のサポートを受けながら、今大会で大きく成長した1人でした。

コロナ禍での準備の難しさ 変化に適応する方法は

コロナ禍の話が出ましたが、やはり影響は大きかったのでしょうか。

田中 体操は、練習を1日休むと感覚がずれるし、体重が少し増減するだけで演技に影響が出る繊細な競技です。重くなるとケガの原因になりかねないし、軽くなるとスタミナが持たない。それに、体操に必要な筋力はマシントレーニングではつけられず、体操の練習でしかつけられないのです。体重を管理しながら継続して練習するしかありません。想像以上にコロナ禍での準備は大変だったはずです。

大畑 ラグビーの場合、そこまで繊細な体重管理は必要ありませんが、現役時代は、常に安定したパフォーマンスを発揮できるよう、食事に注意していました。

 特に環境が変わる海外遠征では、食べ物の悩みはなるべく排除したい。そこで私は、「ジャガイモを食べればコンディションを維持できる」という自分なりのルールを見つけて実践していました。こうしたルールを持つことが、環境の変化に適応する際のコツといえるかもしれません。

結果で評価されるスポーツの世界で、お二人はどのような意識で競技に向き合っていたのですか。

田中 体操選手は18~20歳がピークといわれますが、私がオリンピックに出場したのは25歳でした。遅咲きです。

 本気でオリンピックを目指そうと思ったのは大学3年生のときで、周りには、小学生のころから体操の英才教育を受けてきた人がたくさんいました。そんな中で目標を達成するには、1分1秒も無駄にできないと考え、ロンドンオリンピックまでの4年間の緻密な計画を立てました。

 1年ごとの目標から、半年、3カ月、1カ月、1週間ごとの行動計画にブレークダウンして、その日1日の練習を決めます。あとは達成度を確認しながら、ひたすら練習を繰り返す。試合では自分をほめ、一歩引いた視点で自分をコントロールするよう意識していました。さらに「私はオリンピックに出る」と公言して、退路を断ちました。これも効果的だったと思います。

結果はどうあれ、自分がやり切ったと思えるかどうか

大畑 私は1999年と2003年のラグビーワールドカップに出場しました。残念ながらいずれも1次リーグ敗退でしたが、振り返ると1999年はチーム全体に世界と戦うメンタルが備わっていなかった。一方、2003年は「負けはしたが、戦える」という手応えを感じました。自分のラグビー人生を懸け、2007年大会にチームを導くつもりでしたが、本番前の調整試合でアキレス腱を断裂しました。

 ケガの痛みはもちろんですが、胸がえぐられるようなショックを受け、その瞬間は目の前が真っ暗になりました。でも、やがてこう思えるようになったんです。「チームの力になれるよう、すべてを注ぎ込んだ時間は無駄にならない」。結果はどうあれ、自分の中でやり切った感覚があるなら、あとは仲間を信じて託せばいいのです。本番には出られませんでしたが、こう思えたことが立ち直るきっかけになりました。

アスリートの視点で、ビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

田中 継続、協調、我慢、挑戦の大切さなど、私はスポーツに多くを教わりました。生きる上でも、仕事をする上でも、スポーツとつながる部分は多い。成長する過程を楽しむ意識を持つことが大切です。

大畑 努力したことに対して結果が出る。スポーツもビジネスも同じです。自分の可能性を信じ抜き、「為せば成る」の精神でがんばってほしいですね。

進行/フリーアナウンサー 久下 真以子氏
進行/フリーアナウンサー 久下 真以子氏
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本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。