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 以前は10年かかると言われたデジタルトランスフォーメーション(DX)がコロナ禍を受けて一気に加速しています。気候変動によって多発する災害への対策も急務であり、グリーントランスフォーメーション(GX)という言葉も耳にするようになりました。持続可能な社会に向けた取り組みがあらゆる企業に求められる中、IBMでは4つのテーマに注力しています。

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DXを推進していくための重要ポイントは「AI」「ハイブリッドクラウド」「共創」です

 1つ目は「DXの浸透」です。当社調査によれば、受け身の対応でなく、テクノロジーで積極的に市場を作っている企業がより成長しています。そしてAI・ハイブリッドクラウド・共創の3つのアプローチが効果的なことが分かっています。

 日々40万丁の豆腐を製造している四国化工機では豆腐の割れ目やくぼみ、欠けなど不良品を判別するモデルをIBMと共創し、目視だった検品を自動化しました。ロボットや無人搬送フォークリフトを連動させ箱詰めや倉庫搬送でも省人化を進めています。また、コールセンターで新型コロナワクチン接種に関する回答を自動化した米国大手薬局のCVS Health、デザイン思考を採用して新しい予約アプリを4カ月で構築したアメリカン航空など、数多くのDXの好例が生まれています。

 一方でDXを進める上での課題も明らかになっています。まず、あらゆる基盤での動作を実現するプラットフォーム・フリーの観点です。パブリッククラウドであれオンプレミスであれ、独自環境に縛られると移行や横展開に困難をきたします。プラットフォームにとらわれない環境構築やコンテナ化を進める必要があります。次に、アプリと基幹システムの連携の観点では、個々にAPIを作りこまず、当社のDigital Service Platform(DSP)のようなオープンなプラットフォームを採用し、ホストのデータの有効活用やセキュリティの確保を図ることが重要となります。実績ベースで開発スピードの3割向上やコスト4割減につながっていきます。さらに、システム運用の観点ではAIによる自動化が有効な手段です。現在のシステムはいまや多数の他システムと接続し、安定稼働やインシデントからのリカバリーが格段と難しくなっていて、もはやすべてを人やツールだけで対応するには限界がきているからです。当社のAIOpsを用いることでインシデントの解決を従来の約2時間半から7分に短縮した実績もあります。

温暖化・気候変動へ対応し持続可能な社会の実現に貢献

 2つ目は「温暖化・気候変動への対応」です。三井化学とIBMはブロックチェーン技術による資源循環プラットフォームを構築します。原材料から製品の製造・販売・使用、その後の回収から解体・破砕を経てリサイクル原料となり製品製造に再利用されるまで、トレーサビリティを担保します。

 三菱重工業とは、カーボンニュートラルに貢献するため、CO2の流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX(コネックス)」の構築で協力。旭化成とはプラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」で消費者の行動変容をも促します。

 IBM自身も2030年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロにすることを宣言し、再生可能電力の利用増加やデータセンターの冷却効率の向上、さらに消費電力を大幅に削減する次世代2nm(ナノメートル)チップの開発などを進めています。

社会全体のデジタル人財育成と量子コンピュータにも注力

 3つ目は「社会全体のデジタル人財育成」です。関西学院大学とは「AI活用人材育成プログラム バーチャルラーニング版」を開発し初心者でもAIの実践的なスキルを体系的に習得できるようにしました。今夏には企業や自治体などへの提供が始まりました。

 他にも生徒の発話をAIでテキスト化して習熟に生かす広島県安芸太田町での取り組み、東京都・神奈川県・茨城県で高校と専門学校でのIT人財育成を目指す「P-TECH」、就職氷河期世代や女性のスキル育成、就労を支援する「SkillsBuild」、企業でのAIビジネス推進者を育成する「IBM Cognitive Technology Academy」、障がいのある大学生へのインターンシップ・プログラム「Access Blue」などのチャレンジを続けています。

 4つ目が「量子コンピューティングによる未来」です。5月には三菱ケミカル、JSR、慶應義塾大学との共同研究の成果が世界的に権威のあるネイチャー専門誌に掲載されました。6月にはハードウエアテストセンターを東京大学に開設。7月下旬には川崎市の当社施設内に量子コンピュータの実機を設置し、皆様にお使いいただけるよう準備を進めています。これらによって数十年から数百年もかかるといわれていた計算が数分から数時間でできるようになり、創薬や新素材の開発、金融におけるリスク分析などの分野で発展が期待できます。東京大学が主導する量子イノベーションイニシアティブ協議会を中心にエコシステムを構築することで、戦略的な研究開発を強化し、産官学協力の下で我が国全体に貢献していきます。

本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。