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 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの価値観や社会のあり方に変化をもたらしました。世界的にデジタルシフトが進む中、日本でもテレワークや遠隔教育、遠隔医療など、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しています。9月には、行政、公的機関のデジタル化の遅れを挽回し、新たなデジタル社会を構築する切り札としてデジタル庁が発足しました。シスコは今こそ自らのパーパス(存在意義)を実現する時だと考えています。当社のパーパスは「すべての人にインクルーシブな未来を実現する」ことです。インクルーシブとは包括的という意味を持ち、誰もが分け隔てなく受け入れられ、認められていると実感できる状態。デジタル化が進みつつある今だからこそ、デジタル化の恩恵を受ける人々と受けづらい人々の格差を解消し、誰一人取り残されない社会をつくるチャンスだと考えています。

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お客様の成功への貢献こそが働きがいと感じる会社に

日本企業、そして日本社会のDXを支援 パートナーと共に自らも変革

 パーパスの実現に向け、日本では5つの戦略に重点的に取り組んでいます。

 1つ目は、働き方改革を含めた「日本企業のDXの支援」です。損保ジャパンはビデオ会議サービス「Webex Meetings」を日本全国600超の拠点で2万5000人の社員が利用し、対面営業とオンライン営業のハイブリッドなワークスタイルを実現しました。国内外に2万人以上を抱える技術系人材派遣大手のテクノプロは、多要素認証を可能にする「Cisco Secure Access by Duo」によりセキュリティレベルを高め、どこからでも情報にアクセスできる柔軟な働き方を実現しました。

 2つ目は、医療や教育など公共サービスを含む「社会全体のデジタイゼーションへの貢献」です。その核となるのが、グローバルレベルで推進している「カントリーデジタイゼーションアクセラレーション」です。政府や教育機関、民間企業とのパートナーシップの下、各国のデジタル化を中長期的に支援する戦略的な投資プログラムです。スマートシティ、GIGAスクール、インダストリー4.0の実現、5Gの実証実験など様々な分野に投資しています。例えば、日本では総務省の実証実験の一環としてNTT東日本とローカル5Gを活用した高精細カメラやVRを用いたテレワーク推進プロジェクトを実施しました。

 3つ目は「お客様のライフサイクル全般への支援」です。従来のインフラのシステム構築中心のビジネスモデルから、ソフトウエア、特にクラウド型ソリューション、リカーリングビジネスへの転換を進めており、従来のシステム構築に加えて、導入後の活用、最適化まで含めたお客様のライフサイクル全般を支援します。そのための導入効果の可視化やコンサルティングサービスなどを提供するカスタマーサクセスチームも強化しています。

 これら新しいビジネスモデルを展開するために、2020年にはパートナープログラム制度を刷新しました。シスコのビジネスは常にパートナー様との協業の上で成り立っています。再販だけでなく、マネージドサービスの展開など新たなビジネスモデルをパートナーと展開し、お客様への価値を最大化する「新たなパートナーモデルの推進」。これが4つ目です。

 これら4つの重点戦略を支えるのが、テクノロジーカンパニーとしての「変化に即応できるプラットフォームの提供」です。具体的には、「セキュアでアジャイルなネットワーク環境」「マルチクラウドでの顧客体験に重点を置いたネットワーク最適化」「安全なアクセスと快適なコラボレーションを実現するハイブリッドな働き方」「低遅延で高速な未来のインターネット」「オンプレミスからクラウドまでシンプルに統合されたゼロトラストセキュリティ」「ネットワークを含めたエッジ機能の拡充」の6つの領域に注力し、4つの戦略を実現するプラットフォームとして各種ソリューションを提供します。

競争から共創へ エコシステムの構築が不可欠

 しかし、これらのイノベーションやデジタル変革は、シスコ単独で実現できるものではありません。新しいソリューションやビジネス、マーケットを生み出すにはエコシステムの構築が欠かせません。これまでお付き合いのなかった企業や今まで競合関係にあった企業とも、今後は共創する必要があります。また、お客様とも一歩踏み込んだ戦略的な取り組みが必要と考えています。

 シスコは、オープンイノベーションを起こしていく拠点として世界14カ所にイノベーションセンターを展開しており、日本でも同センターを東京本社内に開設。最先端のテクノロジーやソリューションを紹介するほか、お客様やパートナー企業、ベンチャー企業、大学、オープンコミュニティとのエコシステムを形成し、共同でアイデア創出やソリューション開発、プロトタイプ化、社会実装、マーケティングなどを推進しています。日本の代表的な産業機械メーカーとのスマートファクトリー向けソリューションの開発や、京都府のスマートシティプロジェクトなどはその一例です。

 2020年11月には、5Gによるビジネス価値創出を推進し、活用方法を創造・実証する場として「5Gショーケース」を世界に先駆けて開設しました。他社製品を含む5Gのエンドツーエンドの環境を実機で構築し、最新の企業ネットワーク環境との接続が可能です。今年2月にはローカル5Gの商用局免許の取得を完了。Wi-Fi 6も含めたマルチアクセス環境も実現し、多くの企業やパートナーから具体的なユースケースの検証依頼をいただいています。

 お客様の成功こそがシスコの成功――。シスコは2021年度“働きがいのある会社”大企業部門で第一位に選ばれました。ビジネスの基盤となるのは人財と企業文化にほかなりません。社員一人ひとりが、お客様のビジネスにどう貢献できるか、お客様の成功を強く意識しそれを働きがいと感じる、シスコジャパンをそういう会社にしたいと考えています。

本記事は2021年8月18日~20日にオンライン開催された「IT Japan 2021」のリポートです。