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 ここでも「環境配慮」がキーワードになっていた。ポートメッセなごや(名古屋市)で開催されたプラスチック関連技術の展示会「名古屋プラスチック工業展2021」(主催:中部プラスチックス連合会、中部日本プラスチック製品工業協会、日刊工業新聞社、2021年9月29日〜10月1日)は、33回目となる今回から、「環境配慮型プラスチック」を出展対象分野として追加した。

 トヨタ自動車モビリティ材料技術部部長の永井隆之氏が「カーボンニュートラル観点からの自動車用プラスチックへの期待」と題して講演した他、ポリ乳酸(PLA)樹脂の特設コーナーが設けられるなど、会場全体に「環境配慮」重視の企画・出展が目立ったのは確かだ。しかし、それ以外にも炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の車体やポリプロピレン(PP)製吸音材など興味深い製品が出展されていた。

 その中から特に目についた展示品をいくつかピックアップ。写真を中心に紹介する。

樹脂の使用率4倍で、半分に軽量化

 トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(横浜市)が展示した研究開発車両「Griffon」(グリフォン)は、CFRP部品を採用して車体を軽量化した。フレームは外板ボディーを兼ねたモノコック構造を採用。ボディー全体をスポット溶接して剛性の強化を図った。

CFRP部品の採用で軽量化した車体
CFRP部品の採用で軽量化した車体
(出所:日経クロステック)
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 東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)が展示したのは電気自動車(EV)の「ItoP」(アイトップ)。CFRP製のフレームは外板ボディーを兼ねた一体成形モノコック構造を採用した。前方跳ね上げ式ドアのフレームやタイヤホイール、サスペンションのスプリング部分、インテリアパネルなどにもCFRPを採用。従来車比で樹脂使用率を約4倍に増やし、一般的な金属製モノコックボディーの300kgから140kgへ50%以上の軽量化を実現した。

東レ・カーボンマジックの特殊樹脂製の電気自動車
東レ・カーボンマジックの特殊樹脂製の電気自動車
(出所:日経クロステック)
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 岐阜プラスチック工業(岐阜市)が展示したのは吸音ブース「Remute(リミュート)」。同社のPP製ハニカム吸音材「テクセルSAINT」を採用。曲げ剛性を同程度にしても、質量が鉄の7分の1、アルミニウム合金(Al)の3分の1と軽い。

吸音ブース「リミュート」
吸音ブース「リミュート」
(出所:日経クロステック)
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ポリプロピレンのハニカム吸音材
ポリプロピレンのハニカム吸音材
(出所:日経クロステック)
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 PPの熱伝導率が低い上に、中空のハニカム構造の空気層によって断熱性をさらに高める。人の声の周波数(350〜820MHz)を減衰しやすいフェルト系吸音材を貼り合わせて、ブース内を一般的なオフィス内の騒音値である60dB前後を維持する。写真は、1人でテレワークする用途を想定したテーブル付きタイプ。換気ファンや煙式の火災報知機も装備。ドライバーがあれば2人がかりで、30分程度で組み立てられるという。販売価格は29万7000円(税込み)。