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 PE(ポリエチレン)やPA(ポリアミド)といったプラスチックは、食品や化粧品といった製品の容器包装などに使われる身近な材料だ。いま、そんなプラスチックを使った容器が少しずつ、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない材料に置き換わろうとしている。

 三井化学は2021年2月、従来よりも製造時の環境負荷を減らした接着性ポリオレフィン*1の新製品「アドマーEFシリーズ」を開発したと発表した(図1)。同社が1970年代に「アドマー」として販売を開始した接着性ポリオレフィンは、容器を構成する材料同士を接着する役割を果たすもの。プラスチック製のチューブ容器やボトル容器は、複数の材料を重ねた多層構造を採用するものがあり、その製造で不可欠な材料だ。

図1 接着性ポリオレフィン「アドマー」の例
図1 接着性ポリオレフィン「アドマー」の例
アドマーのペレットの外観(a)と、アドマーを使ったボトル容器(b)の例。(出所:三井化学)
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*1 ポリオレフィン
炭化水素の2重結合を含むプラスチックの総称

 PEやPP(ポリプロピレン)などの一般的なポリオレフィンは、PAやEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)といった極性材料*2と混ざり合いにくく、そのままでは接着が難しいとされる。一方、PEやPPは水蒸気を通しにくく、PAやEVOHは酸素を通しにくいといった利点を備えている。両者を組み合わせることで、それらの利点を併せ持った複合材料が得られる。

*2 極性材料
原子間に電荷の偏りがある「極性分子」を含む材料。PA、EVOH、PET(ポリエチレンテレフタレート)などがある。

 「アドマーはポリオレフィンの主鎖に官能基が導入された材料で、ポリオレフィンと極性材料の間に入れると接着作用が働く」(同社)。2つの材料の間にアドマーを挟み込み、共押出成形などを用いて製造すると、多層構造の製品が得られる(図2)。わさびやマヨネーズといったチューブの容器にこの製品を使えば、賞味期限を延ばしたり、内容物の香りを保持したりする効果が期待できる。

図2 アドマーの包装材への適用例
図2 アドマーの包装材への適用例
断面を模式的に示した。一般のポリオレフィンは極性材料と相溶しないため接着しないが、アドマーを用いると接着が可能になる。(三井化学の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 今回、同社はそんなアドマーのラインアップに、環境対応製品としてアドマーEFシリーズを追加した。アドマーEFシリーズの1つが、バイオマスを用いた「バイオマスアドマー」である。従来の化石資源由来のアドマーと同等の接着力と成形性を持ちながら、従来のアドマーよりもCO2排出量を削減できるのが売りだ。「植物由来の原料(バイオマス)を用いることで、製品を廃棄して焼却する際に排出するCO2を、光合成によるCO2の吸収で相殺できる」(同社)