バイオマスアドマーは、質量の50~80%をバイオマス由来に置き換えた。具体的には、サトウキビから砂糖を得た後に残る出がらし「廃糖蜜」から得られるバイオポリエチレンを用いた。割合に幅があるのは、アドマーの銘柄によって必要なバイオマスの量が異なるからだ。フィルム、チューブ、ボトルといった用途ごとに複数の銘柄があり、バイオマスの利用度合いに違いがある。
例えば、フィルム向けのアドマーEFの場合、バイオマス化度50%以上の「BE518」は、バイオマス化度0%の従来銘柄「NF518」と同等以上の接着力が得られるという(図3)。
「限られた原料を組み合わせて、従来と同等の性能を出すのが大変だった」――。アドマーEFシリーズを担当する、同社モビリティ事業本部機能性コンパウンド事業部アドマーグループの佐々木隆太氏は、商品化にこぎつけるまでの苦労をこう話す。
佐々木氏によると、化石資源由来の原料は選択肢が豊富で、従来のアドマーは100種類以上の原料を組み合わせてそれぞれの銘柄に応じた性能に仕上げていた。しかし、バイオマスアドマーの原料は種類がまだ少なく、「数種類の原料の組み合わせだけから求める性能を引き出す必要があった」(佐々木氏)
バイオマスアドマーは、既に化粧品向けの容器で引き合いがあるという。今後、同社はバイオマスの割合をさらに引き上げるべく、開発を進める方針だ。
同社がアドマーEFシリーズの開発を始めたのは4~5年前という。前述のバイオマスアドマーだけでなく、リサイクル助材として使う添加剤も同時に製品ラインアップとして発表している。プラスチック成形時の端材などを粉砕して再生する際に加えると、強度や耐衝撃性といった物性の低下を抑えられるという製品だ。
同社社長の橋本修氏は20年11月に開いた経営概況説明会で、カーボンニュートラルの実現を2050年に目指す方針を明らかにしている。同社によるCO2削減の取り組みは、人の目に見えない製品の内側から、徐々に進んでいる。