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 近県で仕事があってクルマで移動したことがあります。インターチェンジを降りてすぐの場所だったので、インターネットで地図をちらりと見ただけで出発したのですが、インターチェンジを降りると道に迷ってしまいました。思っていた道が、一方通行で曲がれなかったからです。それに加えて、私はクルマにカーナビゲーションシステムを付けていないため、日暮れを過ぎて、2時間も右往左往することになりました。全ては、移動という作業に対する準備が不足していたからです。

 開発設計には事前準備が大切です。かっこよく表現すると、フロントローディングが大切だということです。私の失敗に当てはめると、「近県の目的地に行く際にフロントローディングが不十分だった」ということになります。

後工程に悪影響を及ぼす

 仕事では前工程の準備不足や検討不足は、後工程にもろに影響します。開発設計段階の検討不足は、工程設計を複雑にする、作業者に組み付け難い作業を強いる、市場で不具合を起こす製品を知らずに生産し続けるなど、生産準備と生産段階に多大な弊害をもたらします。当然です。後工程では設計段階の準備不足や検討不足を見いだして修正することはできないからです。

 だからこそ、開発設計段階はものづくりの流れの中で最もフロントローディングを実施すべき段階だと言えます。開発設計段階でフロントローディングにしっかり取り組まないと、生産準備と生産段階の両方に迷惑をかけてしまいます。開発設計段階は多くのステップで構成されています。やはり、最初の一歩が大切なのです。

 開発設計段階のステップを振り返ってみましょう。設計目標値の設定や構想設計、詳細設計、試作品製作と評価のステップから成るメインプロセス。品質管理ツールの活用や過去のトラブル(過去トラ)の反映などメインプロセスの質を高めるサポートプロセス。デザインレビューや品質保証会議などで構成されるマネジメントプロセス。これら3つのプロセスが組み合わさり、全体は数十に及ぶステップとなります。

 多くのステップがありますが、特に重視すべきは最初のステップ、すなわち設計目標値の設定。なぜなら、他のステップは全て、この設計目標値を達成するためにあるからです。開発設計段階でフロントローディングすべきは、設計目標値の設定なのです。

なぜ、設計目標値を見直すのか

 仕事柄、設計目標値についてさまざまな企業の人と意見交換する機会があります。よく聞くのが、「開発設計段階の半ばで設計目標値を見直す」という話です。確かに、試作品を評価して問題点が見つかれば対策を講じることがあります。これはステップを遡る、つまり手戻りすることになりますが、多くは想定内のはずです。ですが、設計目標値の設定までの手戻りを許してはなりません。なぜなら、それまでに投入した人、もの、金の多くが無駄になるからです。時間については取り返しがつかない場合もあるでしょう。

 にもかかわらず、設計目標値まで手戻りするというのです。その理由を探ると、設計目標値の設定の重要性を理解できていないように感じました。設計目標値を決めるために十分な時間を割かずに、とりあえず開発を始めて、走りながら設計目標値を考えているようなのです。

 開発設計段階における全ての活動は、設計目標値をいかに100%達成するか、そのためだけに存在します。従って、設計目標値を走りながら決めるというのは本末転倒です。設計目標値の設定まで手戻りした場合の損失の大きさと比べれば、設計目標値の設定にフロントローディングを実施する負荷は十分に許容できます。

 では、設計目標値の設定をフロントローディングする取り組みはどのようなものでしょうか。それは、コスト目標値の根拠を明らかにしよう、定量的な根拠を踏まえよう、というものです。「そのコストはお客様に受け入れられるか」「あの競合よりは優位に立とう」「前のバージョンよりも○円安くする」といった具合に、チームメンバーなど関係者が納得できる定量的な根拠を共有化することが大切です。こうして決めた設計目標値であれば、見直すことにはなりません。

 以下のようにまとめられると思います。

  • 仕事は事前準備、すなわちフロントローディングが大切
  • 開発設計段階のフロントローディングは、設計目標値の設定にある
  • 定量的な根拠を踏まえ、チームメンバーが納得できる設計目標値を設定できるように十分な負荷をかけねばならない
  • 開発設計の道半ばで設計目標値を見直すことはあってはならない

 設計目標値の設定にフロントローディングができていますか。これを機会に、一度しっかり振り返ってみてください。