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 今回は「原価管理」と「設計力」の関係を取り上げます。

 「原価」とは、企業が経済行為を営む上で必要な開発や製造、販売、サービスなどの諸活動によって発生する総費用のことです。「原価管理」は、企業の安定的な成長・発展を図るための利益管理活動の一環であり、次の活動を行います。

  • [1]適正な原価目標を設定する
  • [2]現状(未来)原価を正しく把握・認識(予測)する
  • [3]目標とのギャップを解消するための適切な処置する

 原価管理活動は、「原価企画」と「原価改善」に分かれます。前者は「流動前製品」を対象に「今後発生が予測される原価」を取り扱い、後者は「流動中の製品」を対象に「既に発生している原価」を取り扱います。

 「流動前製品」が対象の場合は、あるべき売価と必要利益から原価目標を設定します。すなわち、「売価 - 利益 = 原価(目標)」と表現できます。一方、「流動中の製品」を対象にする場合は、原価を低減して利益を確保するため、「売価 - 原価(低減) = 利益」となります。

原価企画活動は、設計力の取り組みそのもの

 これらの式から分かることは、流動前製品を対象にする「原価企画活動」は、「設計力」の取り組みであるということです。設計力とは、製品仕様「Q」と原価「C」、そして納期「D」を“120%”の品質でやり抜く活動のこと。その「C」に焦点を当てた設計力の取り組みが、原価企画活動なのです。

 設計、製造、企画、調達、品質保証、営業などの関係部署が協力し合い、コストミニマムを追求して、「目標原価の造り込み」を行う。関係部署が「横断的チーム」を組み、「原価企画会議」で、その活動のアウトプットを審議します。

 例えば、1次原価企画会議で、原価目標の設定と関係部署への目標値の割り付け、推進日程の確認を行います。続くN次(第2回以降の)会議では、改善状況の確認や問題点の審議、原価企画目標の割り付けの見直しなどを行っていく。

 一方、横断的チームは、「設計仕様の検討」や「生産仕様の検討」、「調達仕様の検討」、「目標達成度の評価」といった活動状況を原価企画会議に報告します。こうして、市場から要求される売価と職場の対応力とのギャップを埋めていくのです。

原価改善活動にも設計力が必要

 原価管理活動のもう1つである「原価改善活動」は、「製品別原価改善活動」と「機能別原価改善活動」に分けられます。

 一般に原価は、金型費や、設備費、素材費、購入部品費、直接加工費(間接材経費を含む)、製造間接費、一般管理費、販売管理費などで構成されます。これらの費用低減に製品単位ごとに取り組むのが「製品別原価改善活動」です。一方、工場に共通する油脂や消耗部品などの間接材経費の低減や、省エネルギー、物流コストの改善などは「機能別原価改善活動」です。

 前者の「製品別原価改善活動」には、「設計力」が不可欠です。この活動は設計変更(設変)が伴います。小変更となるマイナー設変で済むものもあれば、大きな変更となるメジャー設変もあります。いずれにせよ、設計変更は「変化点」であり、品質不具合の危険性をはらみます。不具合対策で設計変更をするとき、1つ変えればよいところを、「念のため」「安心のため」などと言い、数カ所を同時に変えて、新たな品質不具合を引き起こすことは珍しくないのです。

 原価改善も同じです。品質不具合未然防止のツールである「DRBFM(故障モードに基づく設計評価)」における変化点に対し、不具合モードや原因を十分議論して、抜けのない設計処置をとることが大切。もちろん、設変出図時は、出図チェックシートに基づく出図検討会を開くことも忘れてはなりません。

 まとめましょう。「原価管理」は、原価目標を設定し、現状を正しく把握して、目標と現状のギャップを解消するための活動です。この活動は、流動前製品を対象とする「原価企画」と、流動中製品を対象とする「原価改善」に分かれます。原価企画は原価目標達成の取り組みであり、「C」に焦点を当てた「設計力」そのものです。原価改善は原価低減の活動であり、その中で設計変更が伴う「製品別原価改善活動」は、品質不具合を起こさないように「設計力」を活用しなければなりません。

 原価管理の取り組みに設計力が生かされているか、一度振り返ってみましょう。