全3511文字
PR

 「ギグワーカー」が急増している。クラウドソーシング大手のランサーズによれば、フリーランスの働き手の中でも特定企業との雇用関係を持たない「自由業者(個人事業主含む)」は2021年に859万人と、前年度比で2.4倍に増えた。この「自由業者(個人事業主含む)」には、「ギグワーカー」に該当する人が含まれる。新型コロナウイルス禍による失業の増加や雇用不安の高まり、副業解禁、在宅勤務の増加など様々な要因がギグワーカーの増加を後押ししている。

 ギグワーカーとはインターネット経由で単発の仕事を請け負う個人の働き手だ。ライブハウスなどにたまたま居合わせたミュージシャンが一度限りで演奏に参加することを意味する音楽用語「gig(ギグ)」が語源である。こうした働き方を「ギグワーク」、ギグワーカーが支える経済圏を「ギグエコノミー」と言う。

 ギグワーカーとして真っ先に思い浮かぶのはフードデリバリーの配達員だろう。最大手のUber Eats(ウーバーイーツ)をはじめ、米国の最大手DoorDash(ドアダッシュ)やフィンランドのWolt(ウォルト)、KDDIが出資したmenu(メニュー)などサービスが乱立している。ウーバーイーツは2021年9月、徳島県や島根県など4県でサービスを始め、全47都道府県に進出した。緑に赤、青と各サービスのシンボルカラーのバッグを背負い自転車やバイクで疾走する配達員は、いまやおなじみの姿だ。

 2021年5月の労働政策審議会労災保険部会では、フードデリバリーの配達員の数は約15万7000人とされている。ウーバーイーツによると2021年6月時点の同社の配達員は約10万人。menuは2021年4月時点で3万2000人が配達員として登録している。

 フードデリバリーの配達員だけではない。食事や荷物の宅配に代表される肉体労働から、知識やスキル、ビジネス経験を生かして企業や個人から業務を受託する形態まで、ギグワーカーは多様化している。インターネットを介して働き手と企業をマッチングするサービスが普及し、ビジネスパーソンが持つニッチな知識やスキルでも需要と供給をきめ細かくつなげられるようになった。ロゴやWebサイトのデザイン、SNSアカウントの運営、プログラミング、さらには営業や法務の知識などだ。

 政府や企業が副業や兼業を後押しし始めたのも、ビジネスパーソンがギグワーカーとして働く追い風になっている。政府は2021年3月、ギグワーカーやフリーランスとして働くための環境整備に向けたガイドラインを公表。取引する企業や仲介事業者が順守すべき事柄や現状の法規制との関係をとりまとめた。個人のビジネスパーソンでも、自分の都合に応じて知識やスキルを提供する働き方を選びやすくするのが狙いだ。

実際、一般的な会社員とは段違いに高い収入を得ているギグワーカーも登場している。ギグワーカーへの転身から、収入もスキルも着実に伸ばした2人の働きぶりを通して、スキルを生かすギグワークの形を見ていこう。

救急隊員から転身、新たに生まれる仕事が見つかる「場所」に出会う

 「仕事としての需要が意外なところにあることを知った」。東京都に住む石川明莉さん(29)は、ギグワーカーとして働く中で得た気付きをこう語る。現在、InstagramをはじめとするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコンサルティングや運用代行、EC(電子商取引)サイトの立ち上げや運営などの仕事を請け負う。

ランサーズを介してSNSマーケティングやECサイト立ち上げなどの仕事をする石川明莉さん
ランサーズを介してSNSマーケティングやECサイト立ち上げなどの仕事をする石川明莉さん
(写真:稲垣 純也)
[画像のクリックで拡大表示]