デンソーウェーブ(愛知県・阿久比町)は、新開発の近接センサーや機械学習による制御ソフトウエア「AI模倣学習」によって多関節ロボットを難作業に対応させたシステム4例を「メカトロテック ジャパン 2021(MECT2021)」(2021年10月20~23日、ポートメッセなごや)に出展した。同展コンセプトゾーンの企画展示「未来を変える新時代の自動化」の1つ。位置や向きが一定しない物体を取りに行ったり、粘度が一定でない液体を計量したりするなど、条件の変化に柔軟に対応して作業できるロボットを目指す。
1例目は、受け付けカウンターの上に置いた協働ロボット「COBOTTA」がマスクを把持して来場者に渡すデモ。COBOTTAのアーム先端のハンドにつけた近接センサーにより、マスクの向きを検知し、ハンドの向きをマスクと平行にしてからマスクを挟んで取り、来場者の向きへ差し出す。マスクをゆがませることなく平らなままハンドに挟む。
近接センサーは大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻助教の小山佳祐氏らが開発した。平板状の物体に接近したときに、物体の距離と傾き(角度)が分かる。鏡面のように反射の強い材質や、ガラスのように透明な材質も扱えるのが特徴。センサーにはLED8個と受光素子1個を配置してあり、「LEDの発光パターンと強弱の調整によって平板表面の光の様子が変わるのを検出し、これによって距離と傾きが分かる」(小山氏)という。
2例目は、ねじやワッシャーなど数種類の部品が混在したバラ積みのピッキングを機械学習により可能にするシステム。CADデータを使わず、どんな部品があるかを3Dカメラの画像から学習して認識する。機械学習は部品の領域分けに使い、次いで部品ごとの3D点群データを抽出し、その点群データから部品の向きを把握する。部品の精密な判別が必要な場合は2Dカメラを併用する。
3例目は、ケーブルが付いたコネクターの取り付け作業。ロボット2台を使い、1台がケーブルを把持し、そのケーブルの先端にぶら下がるピンインサート(コネクターのオス側)を、もう1台のロボットがソケットインサート(メス側)に装着する。位置や向きが一定しないピンインサートを把持できるようにした。従来のロボット用プログラムは、作成するうえでピンインサートの位置と向きが固定されている前提が必要だった。
学習の際は、通常のティーチング作業のように人がロボットを動かす。COBOTTAと、実作業用のやや大型の産業用ロボット(VSシリーズ)がマスタースレーブ方式で連動する仕組みを使う。作業者は実作業用ロボットを直接動かすのではなく、COBOTTAを動かせばよい。作業者が40回ほどケーブル装着を繰り返すとAI模倣学習により、ピンインサートの位置と向きが多少バラついても実作業用ロボットがピンインサートを把持できるようになる。
ワーク(ピンインサート、ソケットインサート)の位置と向きは3Dカメラ2台で撮影。学習の際は、3Dカメラで得た画像・深度データと、2台の実作業用ロボット各軸のデータと合わせて、学習用データとしてAI模倣学習に入力する。