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 LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で遠距離の通信ができる無線通信技術の総称である。センサーデータの収集など、IoT(Internet of Things)デバイスに使われることが多い。特に製造業や流通サービス業、社会インフラといった産業向けの用途で有望視されている。

1k~数十kmの通信が可能

 広く使われている無線LANは高速化の一途をたどってきた。最新規格「IEEE 802.11ax」では最大伝送速度が9.6Gビット/秒に達した。しかし、通信距離はせいぜい数十~数百メートル程度にとどまる(PICT1)。このため、広い場所を移動する機器には使えない。また、消費電力が大きいという課題もある。

PICT1●一般的な無線LANは速いが近くだけ
PICT1●一般的な無線LANは速いが近くだけ
(イラスト:なかがわ みさこ)
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 一方、必ずしも高速のデータ通信を必要としない用途も少なくない。例えば定期的にIoTデバイスの死活を監視したり、環境測定センサーで温度や湿度を計測したりするだけなら、数十~数百ビット/秒程度でも情報量的には十分だ。カバーすべき範囲が広くて電源ケーブルの敷設が難しいなど、設置場所によっては電池で長時間稼働できる省電力性能のほうが通信速度より重要視される場合がある。

 こうした「遅くてもいいから低消費電力で遠くまで飛ばしたい」という需要に応えるのがLPWAだ。最大伝送速度は数十~数Mビット/秒と低速だが、1k~数十kmの通信が可能である(PICT2)。

PICT2●LPWAは遅いが遠くまで届く
PICT2●LPWAは遅いが遠くまで届く
(イラスト:なかがわ みさこ)
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