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 宇宙テックの中でサービス開発や業務利用が最も活発な分野が、人工衛星で撮影した画像データを使ったビジネスだ。航空写真では難しい広範囲の地表の画像を生かし、農業やサプライチェーンの管理、施設管理など様々な用途に活用する。打ち上げコスト低下を追い風に、衛星データの可能性はさらに広がりそうだ。

 「地理空間情報のグーグルになる」。こう語るのは米Orbital Insight(オービタルインサイト)のマイク・キム アジア太平洋統括責任者日本ゼネラルマネージャーだ。同社は位置情報や衛星データを使った地理情報分析SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の「Orbital Insight GO」を提供している。

 利用企業の1つが英Unilever(ユニリーバ)だ。パーム油の工場から港まで広範なサプライチェーンの監視に使っている。衛星データから森林の状態を分析し、複数の業者から取得した匿名化された労働者の位置情報を付き合わせて、自分たちのサプライチェーンが森林破壊に関与していないかをチェックする。

米Orbital Insightの地理情報分析サービスの例
米Orbital Insightの地理情報分析サービスの例
(出所:米Orbital Insight)
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 同社は航空大手の欧州Airbus(エアバス)と衛星企業の米Planet(プラネット)から衛星データの提供を受けているほか、全地球測位システム(GPS)や自動車の位置情報、自動船舶識別装置(AIS)など、様々なデータソースを活用している。例えば上海にあるショッピングモールを分析すれば、車両台数や人流など地域経済と相関関係にある対象物の動向も確認できる。

 オービタルインサイトは衛星画像データに写っている物体の識別にAI(人工知能)を使っている。認識アルゴリズムは内製し、基本的な物体検出アルゴリズムなら3カ月程度でつくれるという。現在、同社が提供している分析対象地点は世界400万地点分の商業施設や交通機関、レジャー施設などで、今後さらに追加する方針だ。

宇宙産業の7割超、米アマゾンも参入へ

 米衛星通信協会(SIA)によると、人工衛星産業は2020年に2710億ドル(約30兆円)と、全宇宙産業の74%を占める。企業の参入障壁が下がり、投資が盛んになっているのが要因の1つだ。

 衛星の打ち上げコストの低下が参入障壁を押し下げている。従来は衛星を打ち上げるのに5年以上の期間と数百億円のコストが必要とされていた。しかし小型化が進み、衛星1基当たりの打ち上げコストは数千万~数億円規模にまで減った。宇宙への輸送手段が低価格となったことで、衛星の用途を増やす機会が広がった。