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 人口55万人と日本で最小の県が、地球サイズに収まらない「野望」に向けて動き出した。鳥取県だ。宇宙関連企業の誘致から宇宙体験施設やサービスの運営、衛星データ活用の人材育成、月面探査技術の開発、果ては鳥取県から直接宇宙に行くためのルート開拓まで。宇宙産業の創出に挑戦する。

 壮大すぎるとも見える宇宙産業構想。だが単なる夢物語で終わらせるつもりはないようだ。2021年4月に産業未来創造課を新設し、「宇宙産業の取り組みをスタートした」(同課の井田広之課長補佐)。

 手始めに事業主体となる任意団体、とっとり宇宙産業ネットワークを2021年11月にも設立し、事業創出を目指す。「鳥取砂丘を月面に見立てて、ローバーの開発や月面での居住空間を体験できる場にしたい」などの意見交換がされたという。県民や一般企業からも鳥取県の宇宙産業創出に関するアイデアを募集した。「鳥取県の特産品を使った宇宙食はどうか」「新しい宇宙ビジネスの後押しをしたい」。1カ月で130件の提案が寄せられた。110件が個人、20件は企業だった。

鳥取砂丘と月面探査のイメージ
鳥取砂丘と月面探査のイメージ
(出所:鳥取県)
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 2021年度は宇宙産業創出に向けた公開講座を実施。20~30人の受講生を想定していたところ、60人ほどが参加したという。上記のネットワークと関連して「顔が見えてきた」と井田課長補佐は期待を寄せる。

 鳥取県は旧鳥取三洋電機の城下町だった経緯もあり、「電子機器部品や金属精密加工を得意とする会社が集積している」(井田課長補佐)。既に宇宙産業の一員として活躍する企業も少なくない。例えば金属の精密加工を手掛けるMASUYAMA-MFGは、国際宇宙ステーション(ISS)で使う機器の部品を製造している。鳥取砂丘の砂を固めた土産物のモアイ像を作っているモルタルマジックは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、砂(粉体)を固める技術の共同研究の実地をしている。県内では衛星データを活用して、ネギの生育状態を調べる実証実験も実施中だ。鳥取砂丘で開発した探査車を鳥取から打ち上げたロケットで月に送り、鳥取で育った宇宙飛行士が月面で活躍する――。途方もない夢の実現へ、鳥取県は動き出している。