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 現在、バッチ処理に関わっているエンジニアでも、「理論的にはバッチ処理をなくすことは可能だ」と考えている人は多い。バッチ処理はもともと、コンピューターの処理性能が足りない時代に、すぐにできない処理を後回しにしてまとめて実行するようにしたものだ。理屈のうえでは、コンピューターの処理性能が上がれば、データをすぐに処理する「オンライン処理(リアルタイム処理)」に全面的に移行するのは不可能ではない。

 ただし、そうするためにはバッチ処理を使わないようにシステムを全面的に書き換える必要があり、相応の時間がかかる。日本ユニシスの佐々木貴司常務執行役員CDO(最高デジタル責任者)は「バッチ処理は今後30年から50年くらいは残っていくだろう」と語る。

 「例えば現在の銀行のシステムはつくってから30年はたっていると思う。基幹業務システムは機器の入れ替えやOSのバージョンアップなどは行うものの、アプリケーション自体は最初につくってから30年以上使い続けるものだ。システムを大きくつくり替えるタイミングが来ないと、バッチ処理をなくすような構造の大変革はできない」(佐々木氏)。バッチ処理を全廃したシステムがほとんどない現状では、次になくせるタイミングはシステムが全面刷新される30~50年後というわけだ。

 また、外部システムと連係している場合、その外部システムがバッチ処理を前提にしていると、いくら自社のシステムからバッチ処理をなくしても連係部分には残ってしまう。「月末締め」などバッチ処理を前提とした商習慣もある。社会全体からバッチ処理がなくならない限り、全てなくすのは難しい。

 バッチ処理をなくす必要がないシステムもある。「保険などでは、新規の受け付けを終了した売り止め商品もある。万の単位で加入者がいる長期の保険のシステムは30年以上維持しなければならないが、(システムの構造を)変える必要はない。バッチはバッチのままで残しておけばいい」(アクセンチュアの中野恭秀テクノロジーコンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループアソシエイト・ディレクター)。

チャンスはレガシーマイグレーション

 もっとも、バッチ処理を全廃できないまでも減らすことはできる。その大きなチャンスとなるのが、メインフレームからオープンシステムへの乗り換え、いわゆる「レガシーマイグレーション」のときだ。

 アクセンチュアの中野氏によると、同社が顧客企業のレガシーマイグレーションを手掛ける場合、「バッチ処理を2~3割減らせる」という仮説を立てるケースが多いという。

 中野氏は「バッチ処理で多いのは帳票印刷。業務を紙で『つなぐ』ための処理が多い」と話す。メインフレームではデータをパソコンなどで使える形で取り出すのに手間がかかるため、いったんデータを紙に印刷してそれを業務で使っているのだ。一方、オープンシステムでは手元のパソコンを操作すれば欲しい情報をダウンロードできるケースが多い。いちいち印刷する必要はない。そうしたニーズの改修はメインフレームと比べれば容易だ。

レガシーシステムとオープンシステムの業務フローの違い
レガシーシステムとオープンシステムの業務フローの違い
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 ただ、中野氏が顧客に「レガシーマイグレーション後も帳票印刷のバッチ処理が必要ですか」と尋ねると、必ずと言っていいほどの頻度で「必要だ」と返ってくるという。そこで中野氏は「なくしますが大丈夫ですか」と尋ねるようにしている。それで2~3割のバッチ処理をすんなり減らせるか、抵抗に遭ってほとんど減らせないかは、顧客企業の考え方によるという。