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発電コストでは大差がつかない

 エネルギーの種類で5種類、実装技術ではさらに多様な蓄エネルギー技術を選ぶ際の指標は、典型的放電時間や出力の大きさだけではない。具体的に幾つかの指標で、各技術の優劣を見ていこう。

 まず最重要の指標は、発電コスト(LCOE)の低さだと考えるのが自然だ(図1(a))。ところが、実はこれらのさまざまな蓄エネルギー技術の間で、LCOEには必ずしも大きな差がついていない。LIBよりもLCOEが低いことをアピールする技術も少なくない。

LCOE(Levelized Cost of Energy Storage)=均等化発電(または蓄エネルギー)コスト。その蓄エネルギー技術の導入コストを、その耐用年数の間に、劣化率(割引率)を考慮しながら償却できる充放電1回分の利用費用の最少額。導入費用が同じなら、サイクル寿命が長いほどLCOEは低下する。一般に、充電時の電気代も含むため、異なる蓄エネルギー技術のLCOEを比較するには、計算の前提となる充電時の電気代を一致させる必要がある。また、再生可能エネルギーの出力平準化の追加コストとしてこのLCOEを用いると、電気代の2重カウントとなってしまう。略称にStorageの頭文字を使うLCOSという呼び方もある。
図1 発電コストでは混戦、損失の低さでは重力蓄電がLIBに次ぐ
図1 発電コストでは混戦、損失の低さでは重力蓄電がLIBに次ぐ
各蓄エネルギー技術の均等化発電コスト(LCOE)と、“充電”後に電気として取り出した(放電した)際の損失をそれぞれ比較した。水素のLCOEは水電解装置と貯蔵技術と燃料電池のそれぞれのコストの情報が少ないため、評価を見送った。LCOEの各値は各社の発表値、または日経クロステックの推定値。 LCOEは1日1回の充放電、充電時の電気代は5円/kWhなどと仮定した。LIBについては、サイクル寿命が3650回の場合と1万回の場合でそれぞれLCOEを示した。もっともLCOEが低いのは重力蓄電の1つの技術だが、まだ実績がない。最も損失が小さいのはLIBだが、重量蓄電がほとんど並んでおり、次にフライホイールと続く。水素は電気から水素、貯蔵時、そして水素から電気のそれぞれの損失が響いて、充電した電気の約6割弱が失われてしまう。(図:日経クロステック)
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 これには理由がある。LCOEを左右するポイントは大きく2つ。初期導入コストとサイクル寿命だ。初期導入コストが大きくても、サイクル寿命が十分長いと比較的低いLCOEに収まってしまうことがある。LIB以外の技術は、サイクル寿命に自信のある技術が多く、その結果、LCOEでLIBといい勝負になってしまうのだ。

 LIBの競合技術が示す“LCOEの比較”にも注意が必要だ。LIBはこの数年、エネルギー密度よりも、むしろサイクル寿命が大きく伸長してきた。サイクル寿命または耐用年数をどう評価するかでLCOEの値が大きく変わってしまうが、LCOEの比較では、サイクル寿命が短いやや古いLIBのデータが使われていることが多いからである。