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蓄エネルギーシステムを大量導入する流れは、“全液体電池”ともいえるレドックスフロー電池(Redox Flow Battery:RFB)にも波及してきた。高コストだった従来のバナジウム(V)ベースの電解液の課題を改善する新技術が次々と登場しているのである。塩化鉄(FeClx)のような格安の活物質を使う技術も実用化段階にある。

 レドックスフロー電池(Redox Flow Battery:RFB)はいわば“全液体電池”。タンクに貯めた大量の電解液を、酸化還元反応用スタックにポンプで送り込んで電池の機能を継続させる(図1)。

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図1 電解液の低コスト化がRFB最大の課題
図1 電解液の低コスト化がRFB最大の課題
RFBの特徴と開発のトレンドを示した。従来のRFBは電解液にバナジウム(V)を使うVRFBだ(a)。正極と負極共にVイオンを使い、その価数の違いで酸化還元反応が進む。LIBと比較して、発火の危険性が少ない、設備のうち容量だけ、出力だけをそれぞれ後付けで増やせるなどのメリットがあるが、V電解液のコストが高いことが課題となっている(b)。Vは中国などから輸入しているため、国際情勢や鉄鋼需要で価格が乱高下しやすい(c)。そこで、V電解液を日本国内で安価に調達する技術や、Vイオン系以外の電解液を使うRFBが台頭してきた。(図:日経クロステック)
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 RFBの主な長所は、水系電解液を使うため発火する恐れがなく、有機電解液を用いる一般的なリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)よりも安全性が高い点や、容量(電解液タンク)と出力(スタック)を独立して設定でき、特にタンクの容量を設置後からでも容易に増やせる点などである。一方、水溶液に溶解させた金属イオンを活物質とするため、エネルギー密度が低い課題もある。