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水素吸蔵合金はこれまでは複数の法規制の下にあり、実用化に大きな課題を抱えていた。産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が開発したチタン鉄(Ti-Fe)系水素吸蔵合金は、安全性が比較的高く、受ける法規制も少ない。吸蔵時の圧力や吸蔵速度も実用的な水準で、清水建設が既にZEB(ゼロエミッションビル)の実現に大量に使い始めた。

 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は、「1MPa未満で2時間以内の充填」が可能なチタン鉄(Ti-Fe)系水素吸蔵合金を開発した(図1)。これにより、高圧ガス保安法の規制を受けずに外部から持ち込んだH2をこの合金に吸蔵させることが可能となり、水素吸蔵合金の利活用の幅が広がるとしている。

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図1 初期活性化要らずのTi-Fe系水素吸蔵合金にH<sub>2</sub>を急速充填
図1 初期活性化要らずのTi-Fe系水素吸蔵合金にH2を急速充填
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所が開発したTi-Fe系合金の特徴と、急速充填試験の概要を示した。従来のTi-Fe系合金で必要だった初期活性化が不要となり、タンクなどでの大規模利用に道筋を立てた(a)。高圧ガス保安法の規制を受けない2時間以内で、カードルからタンクに吸蔵できることも確認した(b)。モジュール併設の減圧ユニットで1MPa未満に減圧して合金に吸蔵する。(図と写真:(a)は日経クロステック、(b)は減圧ユニットの写真を日経クロステックが撮影し、残りは郡山市が公開した動画を日経クロステックがキャプチャー)
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 高圧ガス保安法では、1MPa以上の高圧ガスを積載した車両を2時間以上停車すると、積載車が「貯蔵所」と見なされ、隔離措置などの規制を受ける。同研究所が実施した“急速充填”試験では、20MPaのH2100Nm3を1MPa未満に減圧し、タンク10基に約1時間で吸蔵できた。