再生可能エネルギーの大量導入が進んだことで、海外では電力系統の需給バランスからはみ出した余剰電力も大量になっている。その課題を解決するため、今度は蓄エネルギーシステムの大量導入が始まった。市場規模は少なくとも数十兆円。それに向けて、さまざまなタイプの蓄エネルギー技術が次々に提案されている。これらの蓄エネルギー技術は、持ち運ばない定置型がほとんど。これまでの蓄電池の主な用途だった、モバイル端末やクルマなど、持ち運ぶことを前提にした用途とはまったく世界が違う。100年近く前から使われている古い技術から、見たこともないような奇抜なアイデアに基づくシステムまでが続々名乗りを上げ、百花繚乱状態になっている。これらが巨大マーケットの主導権を握るべく一斉に走り出した。

蓄エネ技術、百花繚乱
目次
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産総研のTi-Fe系水素吸蔵合金 清水建設が北陸支店に大量採用
水素吸蔵合金はこれまでは複数の法規制の下にあり、実用化に大きな課題を抱えていた。産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が開発したチタン鉄(Ti-Fe)系水素吸蔵合金は、安全性が比較的高く、受ける法規制も少ない。
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非常識なアルミ鉄合金やノーベル賞候補のMOF 水素吸蔵に名乗り
水素吸蔵合金や吸蔵材料で有望な次世代技術が複数登場してきた。1つはチタン鉄(Ti-Fe)系合金よりもさらに低コストなアルミニウム(Al)とFeから成るAl13Fe4である。この合金の発見は、水素吸蔵合金開発の従来の定石や常識を覆した。実用化へはまだ課題があるが、乗り越える道筋は見えているという。さ…
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水素はTWh分を大量地下貯蔵 チタン鉄系水素吸蔵合金も課題解消
水電解装置で生産したH2は、原則どこかに貯蔵する必要がある。ただ、既存の技術では充填時または取り出し時の損失やコストの高さ、大量のH2の長期保管における気密性の低さやタンクなどの耐久性の低さといったさまざまな課題があり、必ずしも貯蔵が容易ではなかった。
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水電解技術のダークホース「AEM形」 安価な鉄が高性能触媒に
これまで技術的課題のために実用化が遅れていた、アニオン交換膜「AEM(Anion Exchange Membrane)」を使った水電解の研究開発が急速に盛んになってきた。国内でもこの技術の開発に取り組む研究機関は幾つかあり、企業ではパナソニックが参戦した。
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東京ガスがグリーン水素の生産コスト削減へ 天然ガスは合成メタンに
東レとは別に、水電解で利用するセルスタックを印刷由来の技術で大量生産し、水電解装置の大幅な低コスト化、ひいてはグリーン水素の価格の大幅引き下げを狙うのが東京ガスだ。同社は自ら供給する都市ガスのうち、天然ガスを2050年までにすべてグリーン水素由来の「合成メタン」に置き換えようとしている。
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水電解技術は日本勢が巻き返し 東レはNafion越えの電解膜を開発
例え再生可能エネルギーの電力を運搬できるようにする、あるいは長期貯蔵できるようにする「グリーン水素」に変換する水電解技術でも激しい開発競争が始まっている。これまで国内勢はその開発や事業化で出遅れていたが、ここへきて急速に巻き返しつつある。例えば東レは、今までほぼ業界標準だったフッ素系電解膜「Naf…
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再エネ主力化で重要さを増すフライホイール 蓄電池の劣化を抑制
これまでは核融合実験向けの瞬時の大電力の供給や鉄道車両の回生エネルギーの充放電が主な用途だったフライホイールも、再生可能エネルギーの主力電源化時代に向けていよいよ新しいフェーズに入った。材料の刷新に加えて、小型化とコストダウンが進んでいるのである。
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“全液体電池”も大幅コストダウンへ 鉄ベースの電解液も実用化
蓄エネルギーシステムを大量導入する流れは、“全液体電池”ともいえるレドックスフロー電池(Redox Flow Battery:RFB)にも波及してきた。高コストだったバナジウム(V)に代えて、塩化鉄(FeClx)のような格安の活物質を使う技術も実用化段階にある。
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空気を圧縮して電力を貯蔵 効率は驚きの70~80%に向上
電力を気体分子の運動エネルギーや熱、もしくは化学ポテンシャルとして貯蔵するのが「圧縮空気(CAES)」や「液化空気(LAES)」である。これまでは立地場所の制約に加えて、圧縮時の熱損失の大きさが深刻な課題だったが、ここへきて実現手法のさまざまな工夫が実り、それらの課題を解決しつつある。日本企業が事…
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米国で近く始まる重力蓄電 500MWhシステムが半年で竣工?
電力を位置エネルギーとして貯蔵するという点では揚水発電と同じなのが、古くて新しい蓄エネルギー技術「重力蓄電」だ。エネルギー密度は揚水発電と同様に非常に低いが、それ以外の、発電コストの低さや耐久性の高さ、損失の少なさ、そして建設期間の短さなど多くの点で優れた点が多い。
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海外で建設ラッシュの揚水発電 日本でも約8倍に増やせる試算
欧米で蓄エネルギーシステムの大量導入が始まった中、リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)に次いで、導入量が爆発的に増える見通しなのが、揚水発電システムである。
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蓄エネ技術を徹底比較 発電コストでLIB超えでもあの指標で大差
蓄エネルギー技術を選ぶ際の指標は、典型的放電時間や出力の大きさだけではない。具体的に幾つかの指標で、各技術の優劣を見ていこう。
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再エネ余剰電力が深刻化 蓄電池ら“5つのエネルギー”が助っ人に
再生可能エネルギーの導入が進んだことで、海外では電力系統の需給バランスからはみ出した余剰電力も無視できない量になってきた。その課題を解決するため、蓄エネルギーシステムの大量導入が始まった。本命は、リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)だが、LIBだけではカバーできない部分を狙ってさまざまな新旧の…