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 PayPay銀行は2021年10月から、スマートフォンとマイナンバーカードのみで、新規口座を開設できるようにした。マイナンバーカードの公的個人認証サービス(JPKI)を使い、本人確認をする。確実な本人確認ができるだけでなく、入力ミスを防げるため事務負担軽減にもつながったという。

 JPKIはマイナンバーカードの内蔵ICチップに含まれる、電子証明書の情報を利用する。電子証明書には署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2種類があり、本人確認に利用するのは署名用電子証明書である。JPKI自体はマイナンバーを使わないため、法律によって行政手続きなどにしか利用できないマイナンバーとは無関係に、行政機関のほか民間企業でもオンラインでの本人確認に利用できる。

 JPKIを使ったPayPay銀行での口座開設の流れこうだ。Webブラウザーから口座開設の申し込みをすると、ユーザーのスマートフォンのアプリに遷移。アプリ画面から6~16桁の署名用電子証明書パスワードを入力し、マイナンバーカードを読み取る。6~16桁の署名用電子証明書パスワードを入力することで本人であることを確認する。さらに、マイナンバーカードの内蔵ICチップに記録されている氏名、住所、生年月日が自動入力される。

JPKIを使った銀行口座開設の流れ
JPKIを使った銀行口座開設の流れ
(出所:PayPay銀行)
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 一般に、窓口で口座開設をする際は、申請書に氏名や住所などの必要事項を入力、押印し、その上で運転免許証などの顔写真付き身分証明書を提示する。スマートフォンにマイナンバーカードをかざし、6~16桁の署名用電子証明書パスワードを入力することで、これらの一連の作業が自動的に行われるイメージだ。

政府目標を契機にJPKIによる本人確認を導入へ

 金融機関は犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法、犯収法)に基づいて、マネーロンダリングなどの不正行為を防ぐ目的で顧客が口座を開設する際などに本人確認(取引時確認)が義務付けられている。犯収法は2018年11月に施行規則が改正され、オンラインでの本人確認の方法を追加した。

 「身元確認」「当人認証」の組み合わせで本人確認をする。身元確認は利用者がアカウントを登録する際に「利用者が実在する本人である」という点を確認するプロセスで、Webブラウザーやスマートフォンアプリを使って、自らの顔など容貌の写真と氏名や住所、生年月日が記載された顔写真付き身分証明書の画像を送信する方法のほか、マイナンバーカードを読み取り、JPKIの 署名用電子証明書を利用する方法などがある。

 PayPay銀行はこれまでもオンラインで口座開設する際の身元確認として、運転免許証などの顔写真付き身分証明書の画像と自らの顔を撮影する方法を採用してきた。今回JPKIによる本人確認を導入した背景は何か。

 1つは、2022年度末までにおおむねすべての国民にマイナンバーカードを普及するとした政府の目標である。「マイナンバーカードを全国民に普及するという政府の動きが、JPKI利用の決め手になった」とPayPay銀行事業本部の南祐子本部長付部長は導入の契機を説明する。そこで2020年度末から検討を進めてきた。