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 ワークショップや実践型演習の評価ポイントは、実務で評価する視点と同じもので評価している。実務ではこれらの観点がしっかり盛り込まれたビジネスアイデア、企画書になるように指導している。

ビジネスアイデアを評価する観点5つ。実務における評価の視点と同じ
評価ポイント説明
1.実体験をベースにしたアイデアで気持ちが込められているか(手段ありきになっていないか)自分の経験した困りごと、良かったこと、あったらいいなと感動することで語られているか
2.分かりやすく説明できているか。短い時間で本質が伝えられているか(プレゼン能力)短い内容で説明されているか。一目で分かる資料か
3.具体性があるか。抽象論ではなく、具体的な商材やサービスで説明できているか誰に対するどんな商材か。いくらでどこで販売するか
4.論理性があるか。根拠を数字などで示しているか問題に対する打ち手に矛盾がないか。市場規模、販売金額、コスト試算がラフでも数字で示されているか
5.他にはない差別化ポイント(エッジ)があるか類似するサービスの有無、それとの明確な差異などを説明できるか
(筆者作成)

 以下は、オンラインで実施した、実際のVitalityDX塾の実践型演習を一部動画にしたものだ。両方とも1分ほどの短い動画なので視聴していただき、チームが議論している雰囲気を味わっていただきたい。研修事例1は、保険会社と旅行業界の協業というテーマでB2B2Cを主眼に話し合い、研修事例2はネットスーパーの新しいビジネスモデルを作成するというテーマだった。議論の基になったスライドを載せておく。動画では、筆者が上記の評価ポイントを基にそれぞれ講評している。

研修事例1。旅行業界向けのB2B2Cサービスを考えたもので、旅行の付帯サービスに住友生命の健康増進保険「Vitality」を提供することを提案している
研修事例1。旅行業界向けのB2B2Cサービスを考えたもので、旅行の付帯サービスに住友生命の健康増進保険「Vitality」を提供することを提案している
(出所:住友生命保険)
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【動画】研修事例1の一部。筆者からは、より具体性を増して打ち出すようアドバイスした
(出所:住友生命保険)
研修事例2。ネットスーパーの新しいビジネスを考えたものでライフスタイルに応じたメニュー・食材と、リアル店舗や飲食店などとのシェアリングで購入することを提案した
研修事例2。ネットスーパーの新しいビジネスを考えたものでライフスタイルに応じたメニュー・食材と、リアル店舗や飲食店などとのシェアリングで購入することを提案した
(出所:住友生命保険)
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【動画】研修事例2の一部。よく練られた企画案に対し、メンバーが気付かなかった点を指摘してさらに議論を深める(特定企業名は議論のためだけに記述)
(出所:住友生命保険)

 この結果、多くの受講者が「ビジネス視点で考える癖がついた」「ビジネスを発想することに自信がついた」と考えるようになっている。3年くらい継続すると、参加者の意識や日常行動が変わってくることを実感している。それは一緒に仕事をしていれば分かる。分からないことをネットで調べるのが速くなり、それをアウトプットに生かそうとするのだ。

受講者のアンケート結果。「ビジネス視点で考える癖」は、受講者の全員が「ついた」と肯定的に捉えている
受講者のアンケート結果。「ビジネス視点で考える癖」は、受講者の全員が「ついた」と肯定的に捉えている
(出所:住友生命保険)
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別のアンケート結果。「ビジネスを発想することに自信はつきましたか」には4割が「ついた」と回答
別のアンケート結果。「ビジネスを発想することに自信はつきましたか」には4割が「ついた」と回答
(出所:住友生命保険)
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 チームメンバーは今までの仕事のやり方を大事にすることが多く、新しい仕事のやり方を身につけることを嫌がったり、または受け入れたりしないことが多くある。そこで、マインドセットを実施できるような仕事のアサイン、コーチング、評価をする必要がある。これがDXにおけるリーダーの重要な仕事の1つである。

岸 和良(きし かずよし)
住友生命保険 理事 デジタルオフィサー
岸 和良(きし かずよし) 生命保険基幹システムの開発・保守、システム企画、システム統合プロジェクト、生命保険代理店の新規拡大やシステム標準化などを担当後、健康増進型DX保険「Vitality」の開発責任者を担当。現在はデジタルオフィサーとして、デジタル戦略の立案・執行、社内外のDX人材の育成活動などを行う。