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 住友生命保険は現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成を推進している。その活動の中心で、DXを起こすこととその方法について現場で試行錯誤してきた筆者が、DXの勘所を分かりやすく説明する。第2シリーズとしてDX実務で感じたこと、役に立つ考え方などを紹介していきたい。

 前回はDXプロジェクトを引っ張る企画・推進人材にとって特に必要になる能力について説明した。今回はその中で言及した「用語が分からないつらさ」とその解決法について説明する。

前回記事 DXで最初に買ったのは「英語翻訳ソフト」だった

 筆者がDXプロジェクトで直面したのは、「仕事で使うデジタル用語、ビジネス用語が分からない」というものだった。DX型健康増進保険「Vitality」の開発や他のDXプロジェクトで協業先のメンバーと会話する際の「解像度が高い/低い」や「○○文脈」などの言葉の意味が分からなかった。皆さんは以下の言葉を全部理解できるだろうか。

DXプロジェクトで直面した意味の分からない用語例
  • 「解像度が高い・低い」「○○の文脈で言うと~」
  • 「リストから持ってくる」「コンテンツに訴求されない」
  • 「サブスクは従来チャネルとコンフリクトする」
  • 「データビジネスが重要」「クラウドファンディングは使い方がある」
  • 「ロイヤルティーを高める」
  • 「ナーチャリングに向かない商材」
  • 「マイクロサービスの粒度」「UI/UXをどう高めるか」
  • 「APIの粒度」「フロントバックの分担」
  • 「ネーティブアプリにするか、レスポンシブにするか」 など

 このような会話は、特にEC(電子商取引)プラットフォーマーやスタートアップ企業、デジタルマーケティングのコンサルティング会社と仕事をするときに多かった。これらの用語のニュアンスを丁寧に理解する必要があったので、とてもつらかった思い出がある。

 今となっては、「解像度が高い/低い」とは、「話の内容が具体的で理解できる度合いが高い/低い」という意味だと理解できるが、当時は何を言っているのかよく分からなかった。まじめに写真のピクセル(画像を表現するドットの単位)のことだと思ったものである。

 DXのような新しい仕事を進める中での会話には、専門用語や特有の用語、言い回しがある。それを前提とした会話になることが多く、知らない人にはつらい。筆者を含め住友生命でDXの仕事に最初に投入された人たちは、その「専門用語や特有の用語、言い回し」に戸惑ったものだ。

分からないことはスマホで調べる癖を付ける

 この戸惑いから逃れるため、筆者たちがやったのは愚直にスマートフォンなどを使い、ネットで調べることだった。会話中に分からない用語やニュアンスがあると思考が止まる。そこでルールを決めた。それは仕事中であってもスマホで検索し、内容を理解してから仕事を再開するというものだ。

仕事中で分からないことがあればすぐ調べる癖をつける
仕事中で分からないことがあればすぐ調べる癖をつける
(出所:123RF)
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 筆者のチームでは業務中やミーティング中にスマホを触っていてもOKにしている。「仕事中にスマホを触るとは態度としてどうなのか」という意見もあるが、筆者はスマホを「外部脳」と考えており、内部脳と外部脳をうまく使って仕事を進める実務運営をすることで、仕事のスピードを上げているのだ。

 いつでもどこでも(上司の前でも)スマホで調べることには効果があったので、DXビジネスに向けた研修に組み込むことにした。研修は「マインドセット研修」や「ビジネス発想ワークショップ」と銘打って、固くなった頭をほぐし、自由に発想することを目的としている。住友生命の研修ではスマホで知らない用語を調べながらアイデアを発想することにして、それを日常の行動にしようとしたわけだ。

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 答えを出すべき問いが生じれば、研修受講中はスマホで調べて、短時間のうちに答えの方向性を出す。こうすることで研修受講後は、おのおのの業務上においても、すぐに調べる癖が付いている。この「スマホで調べる癖」が仕事を早くした。