PCのグラフィックス機能は、ゲームやVR(仮想現実)・MR(複合現実)の体験を大きく左右する。2021年はクリエーティブやAI(人工知能)といった分野への活用も進められた。現状を確認し、今後の動向を見ていこう。
CPU内蔵か独立したチップか
PCの画面を描画するグラフィックス機能は「GPU(Graphics Processing Unit)」が担当する。ほとんどのCPUがGPU機能も統合していて、CPUに統合されたGPUは「iGPU(Integrated GPU)」「内蔵GPU」などと呼ばれる。一方、CPUとは独立して単体で搭載されるGPUは「ディスクリートGPU」「外部GPU」などと呼ばれる。
米Intel(インテル)は、ノートPC向けの第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)で内蔵GPUにリソースを大きく割いて高性能化を図り、それまでの内蔵GPUとは一線を画す性能を実現した。しかし、それでもディスクリートGPUとの差を埋めるまでには至っていない。
内蔵GPUは基本的にグラフィックスメモリーとしてメインメモリーを利用するため、そこが性能のボトルネックになって性能の限界がくる。またディスクリートGPUの進化も著しく、内蔵GPUのみのPCとディスクリートGPUを搭載したPCとの間には「できること」に大きな差が生じている。
内蔵GPUでも、ビジネス用途や動画鑑賞中心のエンターテインメントであれば十分な性能と機能を備える。しかし、ゲームの配信や動画編集などのコンテンツ制作となると内蔵GPUで間に合わず、ディスクリートGPUが必要になる。
ディスクリートGPUで圧倒的なシェアを誇るGeForce
ディスクリートGPUで圧倒的なシェアを誇るのが米NVIDIA(エヌビディア)のGeForceシリーズだ。最新のGeForce RTX 30シリーズではデスクトップPC向けとノートPC向けが用意され、数多くのPCに搭載されている。
GeForce RTXは、メインの演算器である「CUDA」のほかに、光や影の描写を処理するレイトレーシング専用の「RTコア」とAI処理用の「Tensorコア」を統合している。このRTコアとTensorコアが、ゲームやクリエーティブ、ビジネスにおけるビデオ会議などのAI活用で重宝される。GeForceにはRTコアやTensorコアを省いた低価格のGTXシリーズも用意されているが、「RTXであるか否か」はユーザー体験の1つの分岐ポイントになりつつある。
ディスクリートGPUでは、米AMDのRadeon RXシリーズがエヌビディアのラインアップに匹敵する3D描画性能を備えている。ただレイトレーシング性能やプラットフォームを含めたAI活用という点ではエヌビディアが先行している。