ノートPCを構成する部品でここ10年の間にもっとも進化したのは画面(ディスプレイ)かもしれない。最近では低価格PCでも暗く視野角の狭い画面を見ることはほとんどなくなった。高級機では有機ELディスプレイ(OLED)やミニLED液晶ディスプレイを搭載する製品も増えてきている。
IPSの液晶ディスプレイが主流
ノートPCの画面としてもっとも一般的なのは液晶ディスプレイだ。電圧をかけると角度が変わる液晶分子をバックライトのシャッターとして利用し、色や明るさを調整するしくみだ。液晶分子の制御方式によってIPS(In Plane Switching)、VA(Vertical Alignment)、TN(Twisted Nematic)といった種類がある。10年ほど前まではベーシックなTNが多かったが、現在はIPSが主流だ。
IPSは原理的に視野角を広くでき、発色もよい傾向がある。「IPS」は商標であるため、IPSの表記が使えるメーカーは限られている。ただ、同等の技術でIPS相当の性能を実現している製品は多い。具体的な視野角の数字でいえば、上下、左右とも「178°」が目安になる。
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最近採用例が増えてきているのが、有機ELディスプレイだ。液晶分子を使わず、電圧をかけると発光する有機化合物を利用してピクセル(画素)を構成する。色や階調の表現において原理的な優位があり、高コントラスト比、高色域を実現しやすく、視野角、応答速度にも優れる。特に、黒をより黒く表現できるのがアドバンテージで、コントラスト比のスペックは、一般的な製品での比較で液晶ディスプレイの1000倍にも上る。また、液晶ディスプレイのようにバックライトとシャッターといった分離した構造ではないので、薄くて軽くできる利点もある。
有機ELディスプレイの弱点としては「焼き付き」がある。長時間同じ明るい色を表示し続けると素子が劣化しやすく、その部分だけ光量が落ちることから残像のように見える現象だ。焼き付きなく長持ちさせるには暗色のスクリーンセーバーを利用するなどの工夫が必要だ。
有機ELディスプレイとは別の高画質アプローチとしてミニLED液晶ディスプレイを採用する製品もある。ミニLEDは小さいサイズのLEDを画素の直下に配置(直下型)し、細かく分割したエリアごとに発光を制御できる(ローカルディミング)ようにしたものだ。光源を画面の端のみに配置して制御する(エッジ型)一般的な液晶ディスプレイよりも高色域、高コントラストを実現しやすい。