全2540文字
PR

 クラウドへの需要拡大を追い風に、米Amazon Web Services(AWS、アマゾン・ウェブ・サービス)が自動車業界に攻勢をかけている。2021年11月29日~12月3日(米国時間)に米ラスベガスで開催した同社の年次イベント「AWS re:Invent 2021」で、自動運転向けAI(人工知能)技術の学習や、電気自動車(EV)の航続距離推定などに向けたデータの収集・転送の新サービス「AWS IoT FleetWise」を発表。加えて、自動運転技術やEVを手掛ける新興企業との良好な関係性をアピールした。

 IoT FleetWiseはAWSによる自動車向けの取り組み「AWS for Automotive」の一環として提供する。車両に蓄積されるさまざまなデータの収集や変換、クラウドへの転送、データ分析などを容易に実行できるという。各車両の状況をリモートで診断する用途や、リコールといった安全上の問題を未然に防ぐ用途、自律走行や高度運転支援に向けた機械学習モデルの開発などに向ける。米バージニア州北部とドイツ・フランクフルトのリージョン(広域データセンター群)でプレビュー版の提供を開始しており、他のリージョンでも順次、提供を始める予定である。

AWS re:Invent 2021の基調講演で「AWS IoT FleetWise」を発表
AWS re:Invent 2021の基調講演で「AWS IoT FleetWise」を発表
(出所:AWSの公式動画から日経クロステックがキャプチャー)
[画像のクリックで拡大表示]

収集データのフィルタリングを容易に

 AWSによれば、高度な車載センサーを搭載した車両では、例えば1台当たり1時間に最大2T(テラ)バイトのデータが生成されることがあるという。このデータをそのままクラウドに転送すると膨大なコストが発生するため、自動車メーカーはフィルター機能などによって特定のデータだけを集める必要がある。加えて、メーカーごとにさまざまな車種があり、搭載オプションも複数存在することから、フォーマットの異なるデータが存在する。そのためデータの標準化が求められる。こうした要求を満たすカスタムのデータ収集システムを構築すると、時間もコストもかかる。

 この課題解決に向けて提供を始めたのがIoT FleetWiseである。数百万台規模の車両からほぼリアルタイムにデータを収集してクラウドに転送する処理を、簡易かつ低コストに実現できるという。IoT FleetWiseを使えば、自動車メーカーはカスタムのデータ収集システムを開発する必要がないとする。

 例えば自動車メーカーは、「2ドアのクーペ」といった車両の属性や車種、センサー、搭載オプションなどの項目を定義(構造化、ラベル付けなど)して車両をモデル化する。その上でIoT FleetWise用アプリを車載ゲートウエイにインストールし、AWSとデータをやり取りできるようにする。自動車メーカーは収集・分析するデータのフィルタリング条件や、データを転送するタイミングのルールを決めることで、冗長なデータを削減できるようになるという。