大手クラウド事業者がこぞって力を入れるサービス分野の1つは機械学習だ。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)も、製造設備の故障や不具合の兆候を察知してメンテナンスに生かす「予知保全」や、傷・剥離・亀裂など物品の「欠陥検出」といった用途に役立つ多様な機械学習サービスを提供している。
AWSの年次イベント「AWS re:Invent 2021」(米国時間の2021年11月29日から12月3日にかけて開催)の会場で日経クロステックの取材に応じた同社Machine Learning & AI部門ゼネラルマネジャーのバシ・フィロミン氏によれば、米国企業を中心に機械学習サービスの採用が進んでいるという。

AWSが予知保全向けとして提供するサービスとして「Amazon Monitron」と「Amazon Lookout for Equipment」がある。Monitronについては、AWSが用意した小型センサー、ゲートウエイ、機械学習モデルを利用することで、ユーザーに機械学習モデルの開発経験がなくても、産業機器の異常の兆候を検知できるという。
Monitronは回転機構を備える産業機器での利用を想定している。回転機構を備える産業機器は製造現場に数多く導入されている。
Monitronの仕組みは例えば次のようなものだ。小型センサーをモーターやポンプ、ファン、ベルトコンベヤーに取り付け、振動と温度を測る。その結果を、AWSが用意した機械学習モデルで解析し、異常やその兆候を検出する。スマートフォン向け専用アプリを用意。アプリは各種通知を受け取って表示するほか、Monitronのセットアップにも利用できる。
Monitronが機械学習モデルの経験が乏しいユーザー向けなのに対して、Lookout for Equipmentは経験者向けといえる。製造現場にセンサーを設置済みで、異常検知用の独自モデルを構築したいユーザーに向く。圧力や回転数、流量、電力、温度など様々なセンサーデータをクラウドに送信すると、機械学習モデルを構築して推論結果を返す。
予知保全と並んで、製造業で需要が多いのは画像解析の機械学習サービスだという。AWSはそのサービスとして、「AWS Panorama Appliance」と「Amazon Lookout for Vision」を提供している。
このうち中核のサービスはPanorama Applianceで、工場などに設置済みのIPカメラ群と専用エッジ端末を接続することで、画像解析機能を付加できる。必要最低限の導入費用で済むことや、高機能なカメラが不要な点が特徴だという。
Lookout for Visionは、AWSで学習させた画像解析の機械学習モデルを利用し、製品やプロセスの異常や欠陥を検出するサービスである。わずかなデータセットでも、異常検知モデルを構築できる点を特徴にうたう。