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 第3回は、第2回に続いて、実際に提供・実施されている代表的なサービスや実証実験から現状を見ていく。

WILLER、都市部での実用性を検証

 「都市部における自動運転を利用した移動」を実証のテーマに掲げているのが、WILLER(大阪市)などが2021年8月18日~10月29日に名古屋市鶴舞エリアの一般道で実施した実証実験である*1。同エリアでは、スタートアップを支援する拠点となる施設「ステーションAi」が24年に開業予定であり、25年にステーションAiと名古屋駅を結ぶ無人運転の移動サービスを社会実装しようという目標がある。同実証実験は、それを念頭に実施したものの1つである。

*1 WILLERの他に、名鉄バス(名古屋市)、名古屋工業大学、イオンタウン(千葉市)、WILLER子会社のバス事業者であるWILLER EXPRESS(東京・江東)、シンガポールのSingapore Technologies Engineering(STエンジニアリング)、BOLDLY(東京・港)が参画している。

 走行経路として設定したのは、鶴舞駅と商業施設「イオンタウン千種」の間を行き交う鶴舞駅ルート(昼間運行、往復1.6km)、およびイオンタウン千種と名古屋工業大学を結ぶ名工大ルート(昼間・夜間運行、往復1.4km)の2つである。自動運転による定時定路線運行の実用性を検証した。

 同社MaaS Business Unit MaaS Mobility Service Division Managerの池 あい子氏によると、鶴舞駅ルートには、通称「100m道路」と呼ばれる反対車線とは高架式の高速道路で仕切られた片側4車線の幹線道路「若宮大通」が含まれている。また、便によっては、片側5車線の幹線道路も通るというルートだ。

 これらの幹線道路は交通量が多く、一般の車両も2輪車も自転車も存在する。ただ、車道とは分離された歩道があるため、歩行者や自転車はほぼ歩道を通る形だ。一方、ルートには幹線道路以外も含まれており、それらは片側1車線の道か一方通行の道となっており、歩行者や自転車は道路の脇を通行している。

 実証実験に用いた自動運転車両は、フランスNAVYA(ナビヤ)の自動運転シャトルバス「ARMA」である(図1)。その日本の総代理店であるマクニカによると、ナビヤはARMAをレベル3対応と位置づけている*2。だが、ARMAを利用している企業の中にはレベル4対応とみるところもある。ARMAには、ステアリングホイールやブレーキペダル、アクセルペダルは付いていない。代わりにゲーム機のコントローラーで操作できるようになっているという。

図1 WILLERなどが実施した名古屋市鶴舞エリアにおける実証実験に使った自動運転車両
図1 WILLERなどが実施した名古屋市鶴舞エリアにおける実証実験に使った自動運転車両
ナビヤの自動運転シャトル「ARMA」を利用した。「Nanamobi」とは実証実験で提供するモビリティーサービスの名称。(出所:WILLER)
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*2 マクニカでは、自動運転車両を活用したMaaS(Mobility as a Service)の実用化支援も行っており、ナビヤ製以外の自動運転車両を用いた支援も行っている。また、ナビヤがレベル4対応とうたう自動運転シャトル「EVO」も販売している。マクニカによれば、ナビヤは数年後の投入を目指して、シャシーとボディーをはっきりと切り分けた新しいプラットフォームを適用した自動運転車両の開発を外部パートナーと進めているという。