有機顔料やエンジニアリングプラスチックなどを製造販売するDIC(旧大日本インキ化学工業)は、製造現場でのトラブル発生時に熟練者と同等の対応を可能とするAIシステム「Prism」を開発。2021年6月から同社鹿島工場[茨城県神栖市、(図1)]の顔料製造部門の一部で試験運用を、12月1日からは同製造部門全体での運用を開始した。熟練者の「思考」を反映した検索結果を返し、若手に継承するのが狙いだ。
類似度順にトラブルの情報を表示
設備機器で動作の不具合や音の異常といったトラブルが発生した際、現場の作業者はパソコンやタブレット端末でPrismを起動し、その事象に関連する文章や単語を入力する(図2)。例えばユーザーが排水のpH(水素イオン濃度)に異常を見つけた場合に入力するのは、「排水ピットのpH計が不調で操作盤に赤ランプが点灯している」といった文章や、「排水ピット」「pH計不調」「赤ランプ点灯」といった単語だ。
するとPrismは検索結果として、排水のpH異常に関する過去トラブルや想定トラブルの情報を類似度の高い順番に表示。各トラブルについて、発生状況や原因、応急処置内容、是正処置内容も表示される。「排水センターに事前に連絡」といった対処前に実施すべきことまで示される。
検索の精度を高めるため、検索結果を絞り込む機能も用意した。具体的には、トラブルが発生した設備機器の設置エリアや設備機種を指定し、より類似度の高い情報を得られる。
試験運用後の結果から、同社はPrism導入に確かな手応えを感じている。従来の設備保全管理システムでもトラブル対処法を検索はできたが、時系列に並べられた関連情報を、上から順に1つひとつ確認するなどして目的の情報を探していた。「Prismでは関連性の高い情報を優先的に見られるので、情報を有効かつ早く活用できるようになった」(同社鹿島工場製造1グループGMの緒方晃洋氏)