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 製造業を中心とした業務改革支援や技術人材の育成、3D-CADのコンサルティングなどを手掛けるSOLIZE(東京・千代田)は、自然言語処理の人工知能(AI)を活用した支援サービスを展開している。その1つが、製品設計を支援する「SpectA DKM」だ*1

*1 DKMはDynamic Knowledge Managementの略。

 SpectA DKMでは、企業内に蓄積されている技術文書や調査報告書などから有益な知識を抽出して再利用しやすいように整理し、技術者に有効な判断材料を提供する業務アプリケーションを構築できる。例えば、設計案に対するリスクを類推して提示する「設計リスク検討アプリ」などが考えられる。同社は2022年9月ごろからのSpectA DKMの提供開始を予定している*2

*2 見積依頼書の読解業務を支援する「SpectA RFQ Guide View」は2021年4月からサービスを提供している。

設計変更の影響範囲も提示する

 製品設計において、全ての部品を一から設計するのは稀(まれ)だ。前モデルの一部の部品に変更を加えて新製品として完成させる場合が多い。仕向け地別などのバリエーションを増やす場合も同様である。その際、設計の「変化点」に着目して設計の妥当性を検討していくのがセオリーだが、当該部品にどのようなリスクがあるのか、他の部品に与える影響や影響範囲を的確に判断するのは難しい。

 例えば、設計対象が燃料タンクだったとする。SpectA DKMを使って構築した設計リスク検討アプリで「燃料タンク」と入力すると、「脱落する」「変形する」「損傷する」といった燃料タンクで発生する可能性がある不具合(リスク)が表示される(図1)。

図1 SpectA DKMによる設計リスク検討のイメージ
図1 SpectA DKMによる設計リスク検討のイメージ
設計対象の関連語句(変化点)を入力すると、その設計対象に関わるリスクや、そのリスクの原因・影響、同様のリスクを抱える類似部品などが提示される。(出所:SOLIZE)
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 ここで「膨張する」を選択すると、「内圧が上昇する」といった燃料タンク膨張の原因や、「車輪と干渉する」といった燃料タンク膨張を要因として発生する可能性のある不具合を提示。リスクとなる現象の連鎖や影響範囲を検討するのを支援する。

 さらに「膨張する」というリスクを持つ燃料タンク以外の類似部品、例えば「バルブ」や「メーター内部」、「インペラケース」などを提示。こうした部品の情報をさらに詳しく見ていくことで、未知のリスクに対する気づきを与える。

 このようにして、経験が浅い若手設計者であっても、ベテラン設計者と同等のリスク検討ができるようになる。SOLIZE Innovationsカンパニー Senior Managerの西田公祐氏は、「設計案のリスクを抽出し、評価するベテラン設計者の頭の中の引き出しをSpectA DKMでは再現できる。設計自体ではなく、設計品質を高めていくという業務を支援するシステムだ」と話す。日々の設計業務の中で設計品質を高められれば、結果としてデザインレビュー(DR)やFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)の効率化を図れる(図2)。

図2 SpectA DKMによる設計リスク検討の流れ
図2 SpectA DKMによる設計リスク検討の流れ
SpectA DKMは、設計者による「セルフDR」を実現。設計リスク検討の効率化を狙う。(出所:SOLIZE)
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