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 「介護(ケア)とは単に食事や風呂の世話をするだけではない。常に(高齢者の)生命力の消耗が最小になるように行動する必要がある」――。データ共有ツールなどICT(情報通信技術)を活用する特別養護老人ホームやデイサービス(通所介護)などを手掛ける社会福祉法人 福祉楽団の飯田大輔 理事長は、介護についてこう説明する。

 介護の専門職は日々、様々な場面で適切な判断が求められる。生命力の消耗を最小にする介護のベースとなるのは、人の体の構造や生理学的な知識だ。そこに高齢者の状態を観察した結果を加味して、高齢者を風呂に入れるべきか、シャワーや足浴にすべきかなどを日々選択している。

介護現場の記録を写真や動画を含めて共有している
介護現場の記録を写真や動画を含めて共有している
(出所:ケアコラボ)
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 最新の介護の現場では、データ共有ツールやセンサーの活用によって、複雑な判断の一部をICTが支援し始めている。例えば施設に入居する高齢者の状態や介護内容などのデータの共有だ。「過去の記録を参考に高齢者の状態変化を把握することで、今実施すべき適切な介護の判断につながる。しかしこれまでの介護記録は高齢者個人の状態を時間軸に沿って振り返りにくく、データが埋もれていた」と介護記録ソフト「ケアコラボ」を手掛けるケアコラボ(東京・世田谷)の藤原士朗 代表取締役は話す。

 ケアコラボは記録のしやすさに加えて、情報共有のしやすさも重視して介護記録ソフトを開発した。高齢者への介護の内容や、体温・血圧といったバイタルデータなどを時間軸に沿って記録していく仕組み。職員はスマホやタブレットなどを利用して、介護現場で介護内容などを記録していく。

 文字だけでなく、写真や動画も投稿できる。高齢者の皮膚に炎症が生じていることを画像で共有すれば、現場の判断の一助となる。炎症が生じている部位や程度などは文章より写真の方が伝わりやすい。他の職員はコメントを書き込む他に、「いいね」「見たよ」ボタンで素早く反応できる。現在全国100法人、600以上の事業所で導入されているという。