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(写真:123RF)
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 新型コロナウイルス禍が長引き、リモートを前提とした働き方が定着してきた2021年。情報システムは「そもそも何のために存在するのか」「どのような形でユーザーにメリットを届けるべきか」といった本質的な意義が問われるようになっている。アクセスランキングの「ITシステム」分野でもそうしたシステムの本質に立ち戻るような記事が多くの読者の関心を集めた。

 1位となったのは、国内の多くの企業で長年使われてきた「PPAP」の禁止にまつわる記事だ。暗号化ファイルをメールに添付して送付した後に、別のメールでパスワードを送付するという手順を指す。PPAPは日本独自の慣習で、これまでも「添付ファイルの盗み見防止策としては効果が薄く、マルウエアのスキャンを妨げる弊害の方が大きい」と指摘されていたが、漫然と使い続ける企業も少なくなかった。ウィズコロナに向けた社内ITの見直しやランサムウエア(身代金要求型ウイルス)の被害拡大などで、ようやく脱PPAPの流れができた格好だ。

 ランキングでは、野村証券と日本IBMとの間で争われたシステム開発失敗を巡る訴訟の関連記事が2位と5位に入った。東京高裁の控訴審では野村のユーザー部門に所属していた「X氏」が、パッケージソフトに合わせて業務を最適化するという会社の方針に反して断続的に変更要求を多発したほか、日本IBMの担当者らに対して「辛辣な他罰的、攻撃的発言」(判決文)を繰り返していたことが明るみに。野村勝訴の東京地裁判決を東京高裁が覆し、野村はいったん上告したものの後に取り下げた。システムは何のために開発するのか、その目的に向けてベンダーとユーザー企業はどう向き合うべきなのか、改めて考えさせられる訴訟だった。

 3位に入ったマイナンバーカードの保険証利用では、患者の診療・投薬履歴を活用しきめ細かい医療・健康サービスを提供可能にする厚生労働省の構想が、足元ではむしろ医療現場を苦悩させている皮肉な状況が浮き彫りとなった。システム構築のゴールは完成させることではなく、多くのユーザーに使ってもらいメリットを感じてもらうことにある。せっかく作ったのに使われないといった悲哀を避けるには、本格稼働時だけでなくプレ稼働時も、市民や医療機関などあらゆるステークホルダーに対するきめ細やかな想像力と目配りが欠かせない。

 上位5本には入らなかったものの、みずほ銀行のシステム障害も2021年のITシステムを振り返るうえで欠かせないトピックだ。ランキングでは6位・9位・10位など、上位20本のうち7本を同社のシステム障害関連の記事が占めた。同社が総額4000億円を投じて2019年7月に本格稼働したばかりの勘定系システム「MINORI」では、2021年だけで8度にわたりシステム障害が発生。経営トップらの辞任表明に至った。どれほど精巧かつ強固なシステムを構築しても、不具合の発生はゼロにならない。そして、そうした万一の不具合発生時の明暗を分かつ備えや初動態勢づくりは、結局のところ人に委ねられている。一連のシステム障害は多くのITシステム担当者にとって大きな教訓となる出来事だった。

ITシステムのアクセスランキング
期間:2021年1月1日~12月17日
順位タイトル
1位日立がPPAP全面禁止へ、「秘文」の添付ファイル自動暗号化ツールも既に販売終了
2位逆転敗訴した野村情シスがIBMに送った悲痛なメール、横暴なユーザーを抑えきれず
3位京大病院がマイナカード保険証利用に「NO」を突き付けたワケ
4位Android版COCOAを「無用の長物」にした重大バグ、4カ月以上見過ごされた理由
5位野村HDが日本IBMに逆転敗訴の深層、裁判所が問題視した「X氏」の横暴な変更要求
6位みずほ銀行窓口業務ストップの真相、DC切り替えをためらい障害が長期化
7位使わなくなったメールの整理に使うGmailの「アーカイブ」、ゴミ箱とどう違う
8位NTT西日本が光回線の注文再開を2度も延期した理由、受付システム更改でトラブル
9位みずほ銀行システム障害の原因に疑問、気になる「前日の運用」
10位バッチ処理は本当に時代遅れか、みずほ銀行も苦しめたその正体
11位みずほ銀行システム障害の全容、データ更新のオーバーフローが発端に
12位ahamoが最もお得なのは何GBの場合?ドコモ新料金プランを詳しく分析
13位みずほ銀行の「前時代的」トラブル、稼働11年のスイッチや6年のディスクが故障
14位NTT西日本で光回線の開通工事不能に、契約管理システムの更新でトラブル
15位HDMIケーブルやデスクマットが330円、机周りで使えるリッチな100均グッズ5選
16位2万円台前半の10型タブレット「M40」、悩んで買った自腹レビュー
17位IEモードの正体や使い方を解説、「脱IE」5個の疑問
18位みずほ銀行システム障害、ATM4300台停止を招いた「運用不備」の真相
19位「何でもExcel」から脱却し、Power BIで積極的に可視化しよう
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