全2113文字
PR

 カインズやワークマン、ベイシアらを束ねる流通の巨人、ベイシアグループ。2021年2月期に初めて売上高1兆円を突破。さらなる高みを目指し力を注ぐのがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。グループ各社をとがらせる「ハリネズミ経営」を標榜し、DX戦略の舵(かじ)取りを担うプロCDO(最高デジタル責任者)らを相次ぎ招き入れている。業界きっての改革派と知られる土屋裕雅氏(カインズ会長であり、実質的なグループトップ)が業績拡大の裏で虎視眈々(たんたん)と進めてきたDXへの足場作り――。土屋流DXの実態に迫った。

 「オンラインショップをリニューアルしました」「カインズアプリからドッグランの予約が可能になりました」「在庫・売り場検索ができるようになりました」「ベイシアアプリをさらにバージョンアップしました」――。

 ベイシアグループ企業のお知らせページや会員向けアプリ上にはデジタル関連の新サービス開始や機能追加のお知らせが続々と並ぶ。

カインズやベイシア、ワークマンなど、グループ各社がデジタル戦略に力を注いでいる
カインズやベイシア、ワークマンなど、グループ各社がデジタル戦略に力を注いでいる
[画像のクリックで拡大表示]

 これはベイシアグループがここ数年で力を注いできたデジタル戦略の賜物(たまもの)といえる。カインズを筆頭にITエンジニアを大量に採用し、システム開発の内製組織を立ち上げ、デジタル戦略の「内製化」を進めてきた結果だ。

2021年2月期に初めて売上高1兆円を達成

 ベイシアグループは1958年に群馬県伊勢崎市で服地店として設立された「いせや」を前身とする小売り主体の企業グループ。ホームセンターのカインズや作業服のワークマン、スーパーのベイシアなど、グループ会社は28に及ぶ。

 創業者の土屋嘉雄氏はグループによる相乗効果よりも各社が互いに競争し高め合う関係にある経営を徹底してきた。グループ企業同士で出店用地を取り合うこともいとわない。そのこともあり、各企業が同じグループであることは消費者にあまり知られていない。

 土屋嘉雄氏が一代で築き上げたベイシアグループは2021年2月期に初めて売上高1兆円の大台を超えた。

ベイシアグループの売上高推移。ベイシアグループの資料を基に日経クロステック作成
ベイシアグループの売上高推移。ベイシアグループの資料を基に日経クロステック作成
[画像のクリックで拡大表示]

 89歳となった土屋嘉雄氏は2019年にカインズとワークマンの会長を退任。現在、グループ全体の舵取りを担うのが、嘉雄氏の長男でありカインズの会長を務める土屋裕雅氏だ。ベイシアグループはホールディングス機能を持たないため、土屋裕雅会長が実質的なグループトップとなる。