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 カインズやワークマン、ベイシアらを束ねる流通の巨人、ベイシアグループ。2021年2月期に初めて売上高1兆円を突破し、さらなる高みを目指して現在力を注ぐのがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。グループ各社をとがらせる「ハリネズミ経営」を標榜し、DX戦略の舵(かじ)取りを担うプロCDO(最高デジタル責任者)らを相次ぎ招き入れている。業績拡大の裏で虎視眈々(たんたん)と進めてきたDXへの足場作り――。ベイシアグループDXの今に迫った。

流通DXのトップランナー、ベイシアグループの全貌(4)より続く

 2021年1月、ベイシアグループにひっそりと新会社が立ち上がった。その名は「ベイシアグループ総研」。プレスリリースは出ておらず、一般消費者はおろかベイシアグループの社員であってもその存在を知る人は少ないという――。

カインズやワークマン、ベイシアなど、グループ各社がDXに向けて緩やかに連携を進めている
カインズやワークマン、ベイシアなど、グループ各社がDXに向けて緩やかに連携を進めている
(撮影:日経クロステック)
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DX戦略を取り仕切るのは日本IBM出身のプロCDO

 同社は、カインズの会長でありベイシアグループの実質的なトップである土屋裕雅氏の肝煎りで立ち上げた新会社だ。コンサルティングファーム出身者やCDO経験者などの中途採用者のほか、各事業会社のビジネスに精通する優秀な社員を集めた頭脳派集団といえる。

 同社に与えられたミッションは「ビジネスとデジタル両軸でのグループの底上げ」(土屋会長)だ。これまでグループ間の連携をほとんどしてこなかったベイシアグループだが、2代目の土屋会長が舵取りを担うようになり、各社の独立性を重んじる「ハリネズミ経営」を維持しつつも緩やかに連携を進めている。

 グループ全体の戦略策定を担うベイシアグループ総研は約1年間、ステルスで組織づくりや戦略策定を進めてきた。中でもとりわけ重視するのが、グループ全体のDXだ。

 その重要なDX戦略を取り仕切るのがベイシアグループ総研の樋口正也執行役員ベイシアグループIT統括本部長。実質的なベイシアグループのCDO兼CIO(最高情報責任者)に相当する。

ベイシアグループ総研の樋口正也執行役員ベイシアグループIT統括本部長
ベイシアグループ総研の樋口正也執行役員ベイシアグループIT統括本部長
(写真:村田 和聡)
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 樋口氏は日本IBMでSCM(サプライチェーンマネジメント)やEC(電子商取引)、デジタルマーケティングなど多様な部門の事業責任者を務めた経歴を持つITのプロだ。日本IBM時代にベイシアグループを担当し、土屋会長とも面識があった。樋口氏は「日本IBMに勤めていたときに(ベイシアグループは)とにかく面白い会社だと思っていた。カインズを筆頭に大胆な内製化に振り切っており、『事業会社はもっとシステムを自分たちで開発できるようにすべきだ』という自分の考えと一致していた」と話す。

 樋口氏は26年勤めた日本IBMを退社後、ネット企業のCDOに就任したが、土屋会長に「ベイシアグループ全体のIT・デジタル戦略の舵取りを任せたい」と声をかけられ、2021年7月にベイシアグループに参画した。