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 ペロブスカイト太陽電池(PSC)は単独(単接合)で使うほかに、他の種類の既存の太陽電池と積層するタンデム(2接合)で太陽光の幅広い波長に対応し、全体として高い変換効率実現を目指す方向もある(図10)。多くの場合、PSCが太陽光のうち青色~赤色の可視光の大部分、他の電池が深い赤色から赤外線を“担当”することになる。こうした分業の結果、2端子型セルで変換効率が30%の“大台”に乗るのも間近かといえる。

(a)Oxford PVのPSC-on-Siタンデムセル
(a)Oxford PVのPSC-on-Siタンデムセル
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(b)本当の狙いはオールペロブスカイト 
(b)本当の狙いはオールペロブスカイト 
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図10 タンデムは当面、結晶Si太陽電池の延命策に
Oxford PVが試作したペロブスカイト(PSC)-on-Siのタンデムモジュール(a)。セル寸法は156mm×156mm。「製品化初期の変換効率は27%」(同社)という。高効率の理由は、幅広い波長域の太陽光を有効利用できるため(b)。ただし、結晶Si太陽電池の価格にPSCのコストが載ることになり、価格的なインパクトは大きくなく軽量薄型化なども期待できない。このため、当初は家屋の屋根など、価格競争があまり進んでいない分野に展開する。ただし、同社は将来は、ペロブスカイト太陽電池だけで超低コストのタンデムセルを作りたいとする。(写真:Oxford PV、図:日経クロステック)

 例えば、英Oxford PVはPSC-on-Si型のタンデムセルで2020年末には、変換効率29.52%と非常に高い値を達成した。2021年6月には結晶Si太陽電池大手の中国JinkoSolar Holding(晶科能源)が、やはりPSC-on-Si型のタンデムセルで変換効率30%を2021年中に達成できる見通しと発表注5)。同年11月にはドイツの研究機関Helmholtz-Zentrum Berlin(HZB)が変換効率29.8%を達成したと発表した。

注5)JinkoSolarはPSCを開発するオーストラリアのベンチャーGreatCell Solarと2017年に技術開発で提携し、PSCとのタンデムセルの開発を進めている。

 このPSC-on-Si型のタンデムセルには上述のJinkoSolarのほか、韓国Hanwha Q Cells(ハンファQセルズ)なども参戦する計画。ただし量産第1号は、PSCの“老舗”Oxford PVになりそうだ。同社は、桐蔭横浜大学 特任教授の宮坂力氏の研究室と早い段階からPSCの共同研究を進めた英University of OxfordのProfessor、Henry Snaith氏が設立した企業で、既にドイツに工場を持っており、製造ラインも導入済みという。2022年初頭にも量産を始める。