ペロブスカイト太陽電池(PSC)は単独(単接合)で使うほかに、他の種類の既存の太陽電池と積層するタンデム(2接合)で太陽光の幅広い波長に対応し、全体として高い変換効率実現を目指す方向もある(図10)。多くの場合、PSCが太陽光のうち青色~赤色の可視光の大部分、他の電池が深い赤色から赤外線を“担当”することになる。こうした分業の結果、2端子型セルで変換効率が30%の“大台”に乗るのも間近かといえる。
例えば、英Oxford PVはPSC-on-Si型のタンデムセルで2020年末には、変換効率29.52%と非常に高い値を達成した。2021年6月には結晶Si太陽電池大手の中国JinkoSolar Holding(晶科能源)が、やはりPSC-on-Si型のタンデムセルで変換効率30%を2021年中に達成できる見通しと発表注5)。同年11月にはドイツの研究機関Helmholtz-Zentrum Berlin(HZB)が変換効率29.8%を達成したと発表した。
このPSC-on-Si型のタンデムセルには上述のJinkoSolarのほか、韓国Hanwha Q Cells(ハンファQセルズ)なども参戦する計画。ただし量産第1号は、PSCの“老舗”Oxford PVになりそうだ。同社は、桐蔭横浜大学 特任教授の宮坂力氏の研究室と早い段階からPSCの共同研究を進めた英University of OxfordのProfessor、Henry Snaith氏が設立した企業で、既にドイツに工場を持っており、製造ラインも導入済みという。2022年初頭にも量産を始める。