ファシリテーションは、効率的に合意形成や問題解決をチームで図るのに役立つ。それを円滑に進めるためには、5つのカテゴリーのスキルが必要である。ファシリテーターを「上手な議事進行役」と捉えていては、会議で成果を導けない。
筆者はデータ分析、活用のプロとして企業のビジネスパーソンや自治体職員など多くの人に「データを活用してパフォーマンスを上げるスキル」を伝えている。
これは個人のパフォーマンス向上に寄与するものの、やはり組織やチームで活動する限り、どんなに優れた個人の意見でもそれだけで意思決定がなされることは少ない。
個人の力量向上と併せて、チームとしての問題解決力や意思決定の質を上げることが、競争力を発揮するための両輪として必要だ。
本特集では、後者に掲げた、チームや組織における意思決定の効率や質を上げるための施策を、「ファシリテーション」をキーワードに考えていく。
単なる「上手な議事進行」ではない
「ダラダラと時間ばかりがかかる議論」「紛糾して結論が出ないまま時間切れ」「何とか結論を出したけど、思ったような成果が生まれなかった」。こうした「望ましくないミーティング」を多くの人が経験したことがあるだろう。今でも日々そういった状況に辟易している最中かもしれない。
どうしたら、もっと良い進行や合意形成が得られるのか。さらに言えばもっと良い結論が出せるのだろう。
「ファシリテーション」という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本語に直訳することが難しいのだが、そのまま辞書を引くと「円滑化」や「容易にすること」など、すぐには理解しがたい表現が出てくる。
一方で、ファシリテーションや、ファシリテーションを行う人を指すファシリテーターという言葉を聞いたことがある人は、「ああ、それってミーティングとかグループ対話の司会のことね」と思ったはずだ。
司会役のファシリテーターがチームメンバーからの意見を「引き出し」、それらを「整理し取りまとめる」という姿をイメージすることが一般的だ。同時になぜか「ファシリテーター」という言葉の響きは「司会者」や「議事進行役」という言葉から連想される役割よりも、その場の仕切りやまとめをうまくやってくれそうな印象を与える。
では、「ファシリテーション」という言葉と、「非効果的・非効率的な会議を何とかしたい」というお題はどうつながるのだろうか。
「ファシリテーション」の本質は、「効率的、かつ目的に対して効果的な合意形成や問題解決をチームで図ること」である。
ここでいう「目的に対して」の意味は、単に「参加メンバーが意見を言えてすっきりした」、その結果「少なくとも参加メンバーの共感と納得が得られた」、「ワイワイみんなで盛り上がったので満足感が高まった」ということではない。もちろんそれらは無いより有ったほうがよいが、あくまで目的は、ビジネスなど組織やチームの成果やアウトプットのパフォーマンス、質をいかに高められるかに置くことが重要であることは強調しておきたい。
では、ファシリテーションに必要なスキルを見ていこう。