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議論中のファシリテーションでは、エンジンとかじ取りの2つが必要だ。メンバーの意見や思考が硬直した際は、適切な質問などが打開策となる。議論をゴールへ向けるかじ取りでは、自分とメンバーの立ち位置の認識が大切である。

 前回は、議論をスタートする前にファシリテーションに必要な準備や構想について解説した。

 このスタート前の部分だけで議論の成否は半分以上決まってしまうといっても過言ではない。一方で、十分な思考と準備の上に臨んだ議論においてもファシリテーターに求められる役割は大きい。今回はこの「議論中のファシリテーション」について解説する。今でも多くの人がファシリテーションと聞くと、真っ先に思い浮かべる内容だろう。

議論を前に進める「エンジン」

 議論が始まった後のファシリテーションでは、限られた時間の中でゴールにたどり着くために、議論を前に進め、狙ったゴールに向かうという2つが主な目的だ。前者に必要なのが「エンジン」、後者に必要なのが「かじ取り」である。いずれも、論理的な思考とコミュニケーション力といった剛柔両サイドのスキルが求められる。

図 ファシリテーションの主な役割
図 ファシリテーションの主な役割
必要なのは「エンジン」と「かじ取り」
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 議論が始まってよく陥るのが以下のような状況だ。

  • 思ったようにアイデアや意見が出ない
  • メンバーが疲れてきて中だるみする
  • 次の一手、ステップが見当たらずあたふたする

 こうした事態を未然に防げればよいが、実際には他人の疲労や感情まであらかじめ織り込むのは難しい。このような事態を打破するために、例えば次のような施策が考えられる

(1)いったん現在の質問を保留し、次の(違う)質問やテーマに切り替えて議論。その後また戻ってくる

 「もっと意見はありませんか」と延々と迫っても、迫るほど相手の思考を硬直させてしまうものだ。気分と思考をいったん目の前のものから解き放ち、視点を違う方向に向けさせることで、凝り固まった思考に刺激と休憩を与えることが目的だ。同じものを見つめ続けるよりも、違うものを見つめてから戻ってくると案外、違うつながりや思考が生まれる。

 また、新たなテーマ(議論が煮詰まる前の状況)であれば、意見を言いやすい。メンバーが意見を出し始めている状況や空気、場を作ることが、行き詰まりを突破するきっかけとなる。

(2)適切な質問で“呼び水”とする

 意見や思考が硬直するのはメンバーだけの問題ではなく、ファシリテーターの質問が適切ではないことが少なくない。

 例えば、納期遅延の原因について話し合う場で、メンバー各自が思いつく要因を出し切ったところで意見がストップして沈黙が続いたとしよう。そこでファシリテーターによる次の2つの質問は、その場にどういった異なる影響を与えるだろう。

質問A:「納期が遅れた原因は他にありませんか」

質問B:「納期が遅れた原因について、私たち作り手側の原因以外に、例えば発注の内容や条件など、顧客側について考えられることはありませんか」

 自分の知っている、思いつく範囲だけで意見を出し切りって思考がストップしている状況である。それに対して質問Bにより「顧客側」という視点を提示することで、メンバーから新たなアイデアを引き出せる可能性が広がる。

 この他にも、事前に議論のプロセスやステップをメンバーと共有し、今どこにいるのか、次に何をやるのか、といった認識を持つことも有効だ。